タグ: 感動する話

開けなかった最後の手紙

三年間、海苔の缶の底に眠らせた最後の手紙を、私はようやく開けた。二十歳の雅人が鉛筆まじりの字で書いた便箋の裏には、読めるようになった頃の私への追伸があった。阪神…

自衛隊の誇り

公民館の集いで浴びせられた問いに、自衛官の弟は六秒黙ってから短く答えました。熊本・八代のい草農家を舞台に、弟が中学の技術の時間に三度も作り直した振るい板の目盛り…

島田先生の髪が短くなった日

祖母の鏡台には、三センチまで削って止まった鉛筆が一本あります。戦後まもない教室で、島田先生の髪が腰まであった理由と、それが一晩で短くなった朝のこと。教壇に置かれ…

うまくいかない日に寄る店

仕事のミスが続いた秋に、独り言のつもりで漏らした一言を、父は居間で聞いていました。三日置いてかかってきた電話と、三十年のあいだ家族を一度も連れてこなかった川口の…

員数の紙が一枚増えた朝

山口・宇部の整備士訓練センターで、同期の一人が退所になった秋のこと。三十九人が指を切って押した血判状は届かず、翌週から員数点検の紙が一枚だけ多くなりました。十四…

雪の夜の未送信メール

クリスマスイブの喧嘩で「ごめんなさい」が言えなかった私に、彼のお母さんが見せてくれたのは、携帯の下書きに残る一通の未送信メールだった。意地っ張りな私が十年守り続…

カレンダーの裏に増えたリボン

富山・氷見のグループホームで働いて七年目の冬、二十人の入居者の方々から私あてに大きな花束が届いた日のこと。集会室のカレンダーの裏に八重さんが留めていた十四本のリ…