大切なあなたに花束を

公開日: 仕事 | 心温まる話

花束(フリー写真)

私は介護施設で働いています。

時々おじいちゃんやおばあちゃん宛に、ご家族の方よりお手紙や花束が届きます。

花束を持って行くと、皆さん集まって来ます。

自分かもしれない…と。

メッセージカードが読まれて、花束が誰宛か判明し、その人だけが喜ぶ。

後の人は、がっかりして部屋に戻ります。

ある時、大きな花束が届きました。

いつものように、おじいちゃんおばあちゃん達が集まって来ます。

今度は誰宛だろう?

早くメッセージカードを読むように急かされました。

私はそれを読みました。

カードには、

『大切なあなたにこの花束を贈ります』

と書いてありました。

期待する皆さんの輝く顔。

そして最後の宛名を見て、涙が込み上げてきました。

それは、ここにいるおじいちゃん、おばあちゃん達全員からの私への花束だった…。

『○○さんへ

大切なあなたにこの花束を贈ります。

いつもありがとう。

あなたの笑顔で寂しさを忘れました』

関連記事

戦後

少女の小さな勇気

第二次大戦が終わり、私は復員した日本の兵士の家族たちへの通知業務に就いていました。暑い日の出来事です。毎日、痩せ衰えた留守家族たちに彼らの愛する人々の死を伝える、とても苦しい仕事でし…

海を眺める男の子(フリー写真)

ぽっけ

「このぽっけ、すごいねんで!!(`・ω・´)三3ムフー!!」 そう言って幼稚園の制服のポケットをパンパン叩いていた友達Aの息子。 ポケットにはハンカチ、ティッシュ、お菓子、…

終電の車内(フリー写真)

親切の輪

終電の発車間際に切符なしで飛び乗り、車掌さんが回って来た時に切符を買おうと財布を出そうとしたが、財布がなかった。小銭入れもない。 どこかで落としたのだろうか。 途方に暮れた…

手を繋いで夕日を眺めるカップル(フリー写真)

ずっと並んで歩こうよ

交通事故に遭ってから左半身に少し麻痺が残り、日常生活に困るほどではないけれど、歩くとおかしいのがばれる。 付き合い始めの頃、それを気にして一歩下がるように歩いていた私に気付き、手…

愛(フリー写真)

伝わる気持ち

嫁は妊娠中。もうすぐ八ヶ月。 ある日、西日の部屋でソファに座ってお腹を撫でている嫁を見ていた。 そしたら何となく言いたくなって、後ろから抱き締めて 「愛してる」 …

虹(フリー写真)

自分らしく生きる言葉

嫌いな人を憎むより、大好きな人を愛したい。 悪い噂話をするより、嬉しいことや楽しいことを話したい。 そのような時間を多くして生きたい。 大切な時間を大切に。大切な人…

散歩する親子(フリー写真)

家族三人で過ごした思い出

私の母親は、私が12歳の時に亡くなりました。 ただの風邪だったのに、入院してから1週間後にはもういなくなってしまったのです。 そして、父親も私が20歳の誕生日の1ヶ月後に…

バイキングのお皿(フリー写真)

埃まみれのパンチパーマ

阪神大震災後の話。 当時、俺はあるファミレスの店員をしていて、震災後はボランティアでバイキングのみのメニューを無料で提供する事になった。 開店と同時に満席になって待ち列が出…

家族

父の告白

ある日、僕が父に「結婚したい子ができた」と告げると、数日後、家族会議が開かれた。 その時の父は、これまでにない真剣な表情で、衝撃の事実を告げた。 「実は、俺とお前は血の繋…

食堂

美味かったな

二十年前のことです。当時、私たち家族は母一人による育てられ、非常に厳しい経済状況にありました。母は私たち三人の子供を育てるため、夜も眠らずに働いていましたが、それでも生活は極貧でした…