タグ: 感動する話

娘が歌ったハム太郎の歌

六歳の娘が突然旅立ち、初七日が過ぎた日曜、父は娘が指折り数えていた二本立ての映画へ一人で入った。ハム太郎の歌が流れたとき、客席の子どもたちが歌う声の中に、あの舌…

セルフレジの飴玉をもらった日

見た目の怖さで避けられてばかりの二十四歳が、スーパーの新しい精算機の前で、手の震える男性に先に「ごめんねぇ」と言われた。拾ったのは数十円の小銭だけ。もらったセル…

作業着のポケットの底

指輪の内側には、サイズの数字のほかに細かい傷が一列だけついていました。二十歳の春に不妊と告げられた私に、作業着のまま駆けつけた彼が差し出した小さな箱。一年後に本…

来週こその付箋が残っていた

働きすぎで急逝した隣の席の宮坂さんと、「仕事ないですか」と声をかけ続けた私。三回忌の日に奥さんから渡された封筒には、私の名前を書いた来週こその付箋が、一枚だけ入…

手首の紐でつながれた夜

中学二年の夏、目の前で幼馴染を失った俺は眠れず、食べられず、夜ごと玄関に立った。そんな俺と兄を結んでいたのは、体育館シューズの白い手首の紐だった。二十年近く経っ…

猫のゆめと過ごした日々

高校生の冬、私の電気毛布の上で産まれた猫のゆめ。出産予定日の十日前に入院したあの日、玄関で待つ猫だったゆめが最後に見せた姿を、娘が二歳になった今、ようやく書き残…