母の炊き込みご飯

公開日: ちょっと切ない話 | 家族 |

炊き込みご飯(フリー写真)

俺は小学生の頃、母の作った炊き込みご飯が大好物だった。

特にそれを口に出して伝えた事は無かったけど、母はちゃんと解っていて、誕生日や何かの記念日には、我が家の夕食は必ず炊き込みご飯だった。

高校生くらいになると流石に『またかよっ!』と思うようになっていたのだが、家を離れるようになっても、偶に実家に帰ると待っていたのは母の

「炊き込みご飯作ったよ。沢山食べなさい」

の言葉だった…。

ある日、会社に電話が来て、慌てて向かった病室には既に親戚が集まっていた。

モルヒネを打たれ意識の無い母の手を握り締めると、母の口が動いた。

何かを俺に言いたそうだった。母の口元に耳を近付けると、

「炊きこ……たよ。たくさ……さい」

と消え入りそうな声で言っていた。

それが最後の言葉だった。

「ママの作ったスパゲッティー大好き!」

口の周りを赤くしてスパゲッティーを食べる娘と、それを幸せそうな目で見つめる妻を見る度に、母の炊き込みご飯が食べたくなる。

老夫婦(フリー写真)

迷惑かけてごめんな

私のじいちゃんは、私が生まれるまでアルコール中毒だったと聞いた。 酒に酔い潰れ、仕事を休む日も少なくなかったという。 ばあちゃんは何度も離婚を考えたと聞いた。 でも、…

手のひら(フリー写真)

出会い

昔、美術館でバイトをしていた。 その日の仕事は、地元の公募展の受け付け作業。 一緒に審査員の先生も一人同席してくれる。 その時に同席してくれたのは、優しいおじいちゃん…

恋人同士(フリー写真)

天邪鬼な君

関係を迫ると、あなたは紳士じゃないと言われる。 関係を迫らないと、あなたは男じゃないと言われる。 度々部屋を訪れると、もっと一人の時間が欲しいと言われる。 あまり部屋…

手紙(フリー写真)

亡くなった旦那からの手紙

妊娠と同時に旦那の癌が発覚。 子供の顔を見るまでは…と頑張ってくれたのだけど、ちょっと間に合わなかった。 旦那が居なくなってしまってから、一人必死で息子を育てている。 …

手を繋ぐカップル(フリー写真)

彼女に宛てた手紙

ゆいへ なあ、俺もうダメみてぇだ。 何でだ? お前に出会うまでは死にたいぐらい毎日が退屈だった。 でも今は俺すげえ生きたい。 何で病気に勝てねえんだろ? …

スケッチブック(フリー写真)

手作りのアルバム

うちは貧乏な母子家庭で、俺が生まれた時はカメラなんて無かった。 だから写真の代わりに、母さんが色鉛筆で俺の絵を描いてアルバムにしていた。 絵は決して上手ではない。 た…

通帳(フリー写真)

ばあちゃんの封筒

糖尿病を患っていて、目が見えなかったばあちゃん。 一番家が近くて、よく遊びに来る私を随分可愛がってくれた。 思えば、小さい頃の記憶は、殆どばあちゃんと一緒に居た気がする(母…

ハンバーグ(フリー写真)

幸せな食卓

結婚して子供が出来て、ホカホカした食卓にみんな笑顔で並んでたりして、時々泣きそうなほどの幸せを噛み締める。 荒みじんの玉葱が入ったでっかいハンバーグや、大皿一杯の散らし寿司。妻と…

花(フリー写真)

母が見せた涙

うちは親父が仕事の続かない人で、いつも貧乏だった。 母さんは俺と兄貴のために、いつも働いていた。ヤクルトの配達や、近所の工場とか…。 土日もゆっくり休んでいたという記憶は無…

父の背中(フリー写真)

本当のお金の価値

私が中学校1年生の時の話である。 私は思春期や反抗期の真っ只中ということもあり、少しばかりやんちゃをしていた。 不法侵入をしたり、深夜まで遊んでいたこともあり、警察にはし…