親と一緒に居られる時間
母が送ってくる青さのりの袋の口には、毎年ちがう本数の輪ゴムが巻いてありました。四万十の冬の川に一人で立ち続けた母と、大阪で働き続けてきた息子。あと何日会えるのか…
胸が締め付けられるような、あの感覚。泣けるほど悲しいわけではないのに、なぜか心のどこかに引っかかって残る話があります。後悔、別れ、言えなかった言葉。切なさの中にこそ、人が生きる美しさがある——そんな短編をまとめました。
母が送ってくる青さのりの袋の口には、毎年ちがう本数の輪ゴムが巻いてありました。四万十の冬の川に一人で立ち続けた母と、大阪で働き続けてきた息子。あと何日会えるのか…
今年の5月まで付き合っていた彼の話。 料理が好きで、調理場でバイトをしていた。 付き合い始めの頃、私が作った味噌汁に、溶け残りの味噌が固まって入っていたことがあ…
年下の彼氏が居た。当時の私は30歳で、彼は22歳だった。 大学生だった彼は、社会人の私に頭が上がらなかったらしく、付き合い始めて3年経っていたが将来の話なんて一…
2012年の夏。 付き合って2年になる彼女がいた。 彼女とは中学の同級生で、成人してから付き合い始めた。 同窓会で2年振りの再会。 お互いにどんな性格なのか、趣…
昨日、恋人が死んじゃったんです。病気で。 そしたらなんか通夜が終わって、病院に置いて来た荷物とか改めて取りに行ったら、その荷物の中に俺宛ての手紙が入ってたんです…
私は現在20歳です。 今付き合っている彼氏とは、去年の夏にナンパされて知り合った。 彼氏の見た目はいわゆるチャラ男で、それなりに遊んでいる感じ。 絶対好きになん…
人前では殆ど泣いたことのない俺が、生涯で一番泣いたのはお袋が死んだ時だった。 お袋は元々ちょっと頭が弱くて、よく家族を困らせていた。 思春期の俺は、普通とは違う…
その人は一個上の先輩で、同級生や後輩からも『たくちゃん』と呼ばれていた。 初めて話したのは小学校の運動会の時。 俺の小学校は、全学年ごちゃ混ぜで行われる。俺は青…
葬式、行けなくてゴメン。 マジでゴメン。 行かなかったことに言い訳できないけどさ、せめてものお詫びに、お前んちの裏の山に登って来たんだ。 工事用の岩の間に作った…
元号が昭和から平成に変わろうとしていた頃の話です。 当時、私は二十代半ば。彼女も同じ年でした。 いよいよ付き合おうかという時期に、彼女から私に泣きながらの電話……
私が小学生の時、野良猫が家に懐いて子猫を生んだ。メス一匹とオス三匹。 その内、オス二匹は病気や事故で死んだ。 生き残ったメスとオスには、アンとトラという名前を付…
急な坂をふうふう息を吐きながら登り、家族のお墓に着く。 風が強いんだ、今日は。 春の日差しに汗ばみながら枯れた花を除去して、生えた雑草を取り、墓石を綺麗に拭く。…
もう2年も前の話になる。 当時、俺は医学生だった。彼女も居た。 世の中にこれ以上、良い女は居ないと思う程の女性だった。 しかし彼女はまだ若かったにも関わらず、突…
秩父の国道沿いのコンビニで深夜勤をしていた頃、午前三時に必ず猫の缶とコーヒーを買っていく人がいました。缶だけは決して袋に入れさせない理由と、仕事を辞めた四年後も…
諏訪の団地で二人の男の子を育てています。弟とは同じ小学校へ行けないと伝えた日、兄は部屋に籠り、三十分後に出てきて、たった一つの約束をさせました。その春から続いた…