おとうさんという言葉
その日は約束の時間ぎりぎりに、舞浜駅のホームから階段を降りた。 雑踏の中には元妻と、ミニリュックを背負った小学3年生の息子が待っていた。 半年ほど見ない間に一回…
胸が締め付けられるような、あの感覚。泣けるほど悲しいわけではないのに、なぜか心のどこかに引っかかって残る話があります。後悔、別れ、言えなかった言葉。切なさの中にこそ、人が生きる美しさがある——そんな短編をまとめました。
その日は約束の時間ぎりぎりに、舞浜駅のホームから階段を降りた。 雑踏の中には元妻と、ミニリュックを背負った小学3年生の息子が待っていた。 半年ほど見ない間に一回…
私の両親は私が小さい頃に離婚し、私はずっとお父さんと生きて来た。 お母さんとお父さん。 どっちに行こうか迷っていた時、お父さんは 「ここに残りなよ」 と言ってく…
高校時代に付き合っていた彼女の口癖だった言葉。 「やらないで後悔するより、やって後悔した方が良いんじゃない?」 別れた後も、何故か手紙のやり取りはしていた。 で…
20歳を迎えたその日、姉が雰囲気の良いショットバーに連れて行ってくれた。 初めてのバーに圧倒されている俺を見て、姉は 「緊張してんの? 何か子供の頃のアンタみた…
二年前の秋、二十年ぶりに訪れた祖母の家。ちゃぶ台の上の色褪せた家族写真と、居間の柱に増えていた鉛筆の線。孫の背丈を想像で足し続けた祖母の、静かな毎年の習慣と、最…
事故で恋人を失い、右脚も失った彼女は、ある朝、彼がいちばん好きだった紺のワンピースで駅へ向かった。券売機の前で落とした百円玉を拾ったのは、見覚えのない年配の男性…
新潟の町の裏で拾った、耳の折れた白い猫。首には大きなしこりがあり、余命は一ヶ月と告げられた。その子は毎朝きまって五時の座布団に座り、戸の外をじっと見ていた。五週…
母が送ってくる青さのりの袋の口には、毎年ちがう本数の輪ゴムが巻いてありました。四万十の冬の川に一人で立ち続けた母と、大阪で働き続けてきた息子。あと何日会えるのか…
今年の5月まで付き合っていた彼の話。 料理が好きで、調理場でバイトをしていた。 付き合い始めの頃、私が作った味噌汁に、溶け残りの味噌が固まって入っていたことがあ…
年下の彼氏が居た。当時の私は30歳で、彼は22歳だった。 大学生だった彼は、社会人の私に頭が上がらなかったらしく、付き合い始めて3年経っていたが将来の話なんて一…
2012年の夏。 付き合って2年になる彼女がいた。 彼女とは中学の同級生で、成人してから付き合い始めた。 同窓会で2年振りの再会。 お互いにどんな性格なのか、趣…
昨日、恋人が死んじゃったんです。病気で。 そしたらなんか通夜が終わって、病院に置いて来た荷物とか改めて取りに行ったら、その荷物の中に俺宛ての手紙が入ってたんです…
私は現在20歳です。 今付き合っている彼氏とは、去年の夏にナンパされて知り合った。 彼氏の見た目はいわゆるチャラ男で、それなりに遊んでいる感じ。 絶対好きになん…
人前では殆ど泣いたことのない俺が、生涯で一番泣いたのはお袋が死んだ時だった。 お袋は元々ちょっと頭が弱くて、よく家族を困らせていた。 思春期の俺は、普通とは違う…
その人は一個上の先輩で、同級生や後輩からも『たくちゃん』と呼ばれていた。 初めて話したのは小学校の運動会の時。 俺の小学校は、全学年ごちゃ混ぜで行われる。俺は青…