お母さんの看病がしたいよ
19歳の頃、癌で入院中のお母さんに、泊り込みで付き添っていた。 その頃、私は予備校に行っていた。 お母さんが 「看護婦さんになって欲しい」 と言ったから、一つく…
胸が締め付けられるような、あの感覚。泣けるほど悲しいわけではないのに、なぜか心のどこかに引っかかって残る話があります。後悔、別れ、言えなかった言葉。切なさの中にこそ、人が生きる美しさがある——そんな短編をまとめました。
19歳の頃、癌で入院中のお母さんに、泊り込みで付き添っていた。 その頃、私は予備校に行っていた。 お母さんが 「看護婦さんになって欲しい」 と言ったから、一つく…
数年前に、実家の一家の大黒柱である父が倒れた。 脳梗塞で、一命は取り留めたものの麻痺が残ってしまった。 母は親戚(成年後見人)に上手いことを言われて離婚させられ…
母の家の三和土には、誰も履かない小さなサンダルが、いつも同じ角度で揃えて置いてあった。妹のお古だと、俺はずっと思っていた。彼女の親に別れさせられた秋、母は泣きな…
県外への進学を、父だけが最後まで大反対しました。理由は一度も言ってくれません。勝手に決めて出て行った娘が、父の車のダッシュボードから折りたたんだ地図を見つけたの…
十年前、彼女が死んだ。 当時、俺達は高校3年生。同じ高校に通い、同じ部活だった。 野球部だった。 俺と彼女は近所に住む幼馴染で、俺は小さな頃から、野球が好きな両…
11年間、飼っていた愛犬が亡くなった。 死ぬ前の半年間、自分はろくに家に帰らず、世話も殆どしなかった。 その間にどんどん衰えて行っていたのに、あまり見ることも触…
その日は約束の時間ぎりぎりに、舞浜駅のホームから階段を降りた。 雑踏の中には元妻と、ミニリュックを背負った小学3年生の息子が待っていた。 半年ほど見ない間に一回…
私の両親は私が小さい頃に離婚し、私はずっとお父さんと生きて来た。 お母さんとお父さん。 どっちに行こうか迷っていた時、お父さんは 「ここに残りなよ」 と言ってく…
高校時代に付き合っていた彼女の口癖だった言葉。 「やらないで後悔するより、やって後悔した方が良いんじゃない?」 別れた後も、何故か手紙のやり取りはしていた。 で…
20歳を迎えたその日、姉が雰囲気の良いショットバーに連れて行ってくれた。 初めてのバーに圧倒されている俺を見て、姉は 「緊張してんの? 何か子供の頃のアンタみた…
一昨年、ばあちゃんが死んだ。 最後に会ったのは、俺が中学生の時だったかな。 葬式の為に20年越しで、ばあちゃんの住んでいた田舎に行った。 次の日、遺品の整理をす…
事故で恋人を失い、右脚も失った彼女は、ある朝、彼がいちばん好きだった紺のワンピースで駅へ向かった。券売機の前で落とした百円玉を拾ったのは、見覚えのない年配の男性…
新潟の町の裏で拾った、耳の折れた白い猫。首には大きなしこりがあり、余命は一ヶ月と告げられた。その子は毎朝きまって五時の座布団に座り、戸の外をじっと見ていた。五週…
母が送ってくる青さのりの袋の口には、毎年ちがう本数の輪ゴムが巻いてありました。四万十の冬の川に一人で立ち続けた母と、大阪で働き続けてきた息子。あと何日会えるのか…
今年の5月まで付き合っていた彼の話。 料理が好きで、調理場でバイトをしていた。 付き合い始めの頃、私が作った味噌汁に、溶け残りの味噌が固まって入っていたことがあ…