カテゴリー: ちょっと切ない話

胸が締め付けられるような、あの感覚。泣けるほど悲しいわけではないのに、なぜか心のどこかに引っかかって残る話があります。後悔、別れ、言えなかった言葉。切なさの中にこそ、人が生きる美しさがある——そんな短編をまとめました。

カーブ!

母子家庭に育った私に野球を教えてくれたのは、四つ上の兄でした。投げる前に必ずカーブと一声かけていた本当の理由を、通夜の晩に初めて知ります。天童の駒師になった兄が…

親指姫

雪深い二月の花屋に、小さな女の子がたった一人で花を買いに来ました。片方だけ握られたミトンと、母のために選んだオレンジのチューリップ。花屋の主人が何年経っても忘れ…

白猫のみーちゃん

転校先の諏訪の寒天場で、亡くなった前の住人の白い猫と暮らした少女がいました。名前を呼んでも一度も返事をしなかった理由は、四十九日のあとに隣家の奥さんの一言で分か…

待っていてくれた猫

小学生の頃に飼っていた白猫は、私が家を空けた冬に用水路で亡くなりました。就職して二年目、泣きながら歩く夜道に現れた一匹の白い猫。越前の眼鏡の町を舞台に、なぜあの…