タグ: 泣ける話

継ぎ目の音を数えた子

六十三歳で夜間の大学に入った元保線員の私は、講義室の窓の震えの中に線路の継ぎ目の音を聞いていました。十八年会っていない父と息子をもう一度つないだのは、私がかつて…

夫の隠しごとと蚊帳の裾

結婚してから五十年、私は夫の隠しごとを恨み続けました。毎年八月十四日だけ、あの人は何も言わずに家からいなくなるのです。継ぎ当てだらけの萌黄色の蚊帳と、桶屋の指に…

割れ寒天と四十年の嘘

寒天づくりの町に嫁いだ私は、四十年ものあいだ夫に小さな嘘をついていました。夫が毎冬とっておいた割れ寒天の行き先を、廃業を決めた最後の冬に、思いがけない訪問者から…

彼が灯さなかった分校

昭和三十四年の奥能登。電気の来ない集落の分校で、十九歳のわたしは毎晩ランプの火屋を磨いていた。ようやく電線が届いた夜、村中に灯りがともるのに、分校だけが暗いまま…