タグ: 泣ける話

娘の望み

六歳の娘が、こづかいを少しずつ貯めて、買おうとした、たった一つの願い。妻を亡くし印刷工場で残業に追われる父と娘の絆を描いた泣ける話です。本当に大切なものを置き去…

三頭の象

閉園の決まった岸ヶ丘動物園へ、私は祖父の遺した古い象舎日誌を持って向かいました。昭和十四年に来園した三頭の象と若き象係の日々、戦争が奪っていったもの、舌を白い布…

一生懸命に取り組むこと

何をしても続かなかった二十六歳の私が、下町の古い銭湯の番台でようやく見つけた居場所。釘に五十年掛かったままの四十七番の下足札、雪の晩の一杯の熱い番茶、そして混み…

母を守りたい

父の暴力から母と二人で大分・臼杵へ逃れ、剣道道場を自分の足で探し当てた九歳の少年。入門から半年、彼が道場の戸にいちばん近い場所へ座り続けた本当の理由とは。十九時…

西日の部屋で振り返った妻

静岡・浜松でピアノの響板を作る工場で出会った妻は、生まれたときから音を知らないろう者でした。西日の部屋で背後からそっと告げた、聞こえるはずのない言葉。それでも妻…

母が売りに行ったカメラ

群馬の桐生でのこぎり屋根の工場を壊す解体屋になった十七歳の私に、母が誕生日に贈った一本の単焦点レンズ。写真機店の古い帳面と、玄関で毎日拭かれていたサンダルの底が…

父が渡した十二年分の通帳

富山・高岡の銅器着色師だった父は、給料日の晩だけ湯呑みに酒を注ぎ、それを飲まずに置く人でした。結婚の報告に帰った日、ぶっきらぼうに差し出された通帳の入金欄は、十…

一巻き目を教えなかった人

三重・尾鷲の港町にある椅子六脚の定食屋つばめ食堂。七十八歳のおかみさんは、だし巻きを焼くとき一巻き目だけ菜箸を右から左へ持ち替えます。半世紀のあいだ誰にも教えな…

藍に染まった手

初めての給料で両親を食事に招いた、新米保育士の私。藍染職人の父は終始不機嫌で、二十年の苦労は晩飯一回で帳消しにはならないと言い放ちました。盃を支える青く染まった…