タグ: 泣ける話

叔父さんの血

盆地の桃農園で暮らす、血の繋がらない兄と私。無口な兄が黙って払ってくれた入学金、姪のために限界まで差し出した輸血。そして姪の結婚式で読まれた一通の手紙が、継いだ…

並べておいたよ

雪深い温泉町で、十九歳の私は独りで娘を育てていました。玄関の履物をいつもそろえてくれた咲。あの子が遺した小さな習慣の本当の意味に私が気づいたのは、何年もあとのこ…

どんぐり

餌をやると、翌朝きまって沓脱ぎ石の右の端にどんぐりが一つ置いてある。お礼だと思っていました。けれどその置き場所には、私が越してくる三年も前から決まっていた理由が…

彼女の遺言

海の見える坂の町の活版印刷所で、わたしと志乃と省吾は出会いました。志乃が昏睡に落ちる前の晩、一人きりで組んでいたのは、自分自身の言葉でした。彼女が遺した最後の版…

店長さんの嘘

塾を辞めた高校生だった僕に、坂の途中の珈琲店の店長さんは「うち、すぐそこだから」と言って閉店後の席を貸してくれました。二年後に知ったその嘘の本当の重さと、十四年…

もう一度、お母さんと

十七歳の誕生日に、育ての母だと知らされた私は、母を「おばさん」と呼び、差し出された手紙さえ、その場で丸めて捨ててしまいました。その翌日、母は突然この世を去ります…

母のエプロン

社会人になって初めての給料で母に何か贈りたかったのに、素直になれず「こんな安物かよ」と口走ってしまった三千円のエプロン。三年後に見つけた家計簿の余白が、その値札…

見守ってくれた兄

仏壇の隅にある一回り小さい位牌。生まれる前に亡くなった兄のものだと聞かされ、俺はその存在をうっとうしいと思っていた。母と怒鳴り合った雨の日、頭の中に響いた舌足ら…