タグ: 泣ける話

天国へ持って行きたい記憶

タオル工場で三十年、白い生地の傷を探し続けた母。傷を見つけるたびに結んでいた赤い一本の糸には、娘が二十四年ものあいだ気づかなかった意味がありました。母がためらわ…

不器用な親父

背中を向けたまま何も言わない父でした。合格の日に病室から掛かってきた一本の電話と、物置のブルーシートの下で五年ものあいだ鳴りつづけていた小さな音の正体。浜松のピ…

親指姫

雪深い二月の花屋に、小さな女の子がたった一人で花を買いに来ました。片方だけ握られたミトンと、母のために選んだオレンジのチューリップ。花屋の主人が何年経っても忘れ…

とうちゃんの卵焼き

妻の入院中、北海道十勝の酪農家である私が、息子の遠足の弁当を作ることになりました。牛乳を入れすぎて崩れた卵焼きと、まだ字の書けない四歳が渡してくれた一枚の手紙。…

血の繋がらない娘

妻の連れ子だった娘を、鬼瓦を彫る職人の私は十二年かけて育てました。血の繋がらない父娘に向けられた世間の冷たい目、そして結婚式で娘が静かに明かした「鬼の裏に彫られ…

半年前の俺へ

セメントの町で三交替に就いた兄は、夜勤明けの朝、必ず弟の運動靴を爪先だけ外へ向けて直してから上がりました。その小さな癖の本当の意味と、閉めた覚えのない扉。半年前…

白猫のみーちゃん

転校先の諏訪の寒天場で、亡くなった前の住人の白い猫と暮らした少女がいました。名前を呼んでも一度も返事をしなかった理由は、四十九日のあとに隣家の奥さんの一言で分か…

待っていてくれた猫

小学生の頃に飼っていた白猫は、私が家を空けた冬に用水路で亡くなりました。就職して二年目、泣きながら歩く夜道に現れた一匹の白い猫。越前の眼鏡の町を舞台に、なぜあの…