タグ: 実話

はね出しの花が毎月消える

店の奥、水道の脇の白いバケツには、売り物にならないはね出しの花が挿してある。毎月14日、そこから一輪だけが消える。電話をかけてくるのは毎回ちがう人で、みんな22…

辻堂前のボタンは鳴る

海沿いの営業所に入って二年目、私はまだ誰からも名前で呼ばれなかった。誰も乗っていないのに、夕方の便で辻堂前のボタンが鳴る。配線の不良だと思った私に、定年間近の先…

転校生の父が歌い出した日

北関東の工業団地の町に転校してきた、日本語のたどたどしい同級生。わたしは一度だけ、彼を見捨てた。合唱コンクールの日、耳の聞こえないはずの彼の父が客席で立ち上がり…

彼が名を彫った二本の若木

子どもは望めないと告げられた日、私は好きだからこそ、彼に別れを切り出した。けれど彼は、裏の畑に植えた二本の若木の根元に、生まれるはずだった子の名を彫った名札を、…