タグ: 実話

雨に溶けた涙

雨の夜、団地の公園で傘もささず立ち尽くす少年を目撃した。一晩中動かなかった少年の正体を知り合いから聞いたとき、胸が締めつけられた。…

とうちゃんの卵焼き

妻の入院中、北海道十勝の酪農家である私が、息子の遠足の弁当を作ることになりました。牛乳を入れすぎて崩れた卵焼きと、まだ字の書けない四歳が渡してくれた一枚の手紙。…

おばあちゃんが注いだ愛情

保健センターの母子教室に迷い込んできた、おばあさんと二人の男の子。袖口のほつれを見もせずに継いだその手つきの意味を知ったのは、半年後、桐生の織物工場の休憩所でし…

貴様飲め

祖母は六十年、毎朝仏壇に向かって貴様と呼びかけていました。悪態だと思っていたその一語の意味が、北満の守備隊にいた祖父の残した一枚の薬包紙と最後の軍事郵便で反転し…

二つの指輪

三度目の流産に泣く妻の隣へ、産科の待合室で見知らぬ五分刈りの男の子が二つの指輪を差し出しました。水色だけが白く曇っていた理由を知ったのは、六年後の祭りの夜のこと…

知ってるよ

結婚の報告に帰省した晩、父から血の繋がりがないと打ち明けられました。知っているよ、と答えた息子。けれど三十年分の運行日誌の余白には、三歳の私が乗った日のことだけ…

あの子は僕の友達なんです

昭和三十四年、瀬戸内の小さな島でたった一人の医者だった私が立ち会った、忘れられない輸血の話です。注射の列でいつも最後尾に下がっていた少年が、その日だけは一番先に…