一番大切なもの
ここ数ヶ月、色々な意味で忙しかった。 25歳で自営を始めて10年と少し営んで来た店を畳んだ。 利益が出ず、嫁の収入が主な生活費になっていて、いつ辞めるかのタイミ…
長い時間を一緒に過ごした二人の話には、言葉では説明できない深さがあります。すれ違い、誤解、後悔、そしてその先にある愛情。夫婦にまつわる泣ける話——結婚することの意味を改めて教えてくれる短編を集めました。
ここ数ヶ月、色々な意味で忙しかった。 25歳で自営を始めて10年と少し営んで来た店を畳んだ。 利益が出ず、嫁の収入が主な生活費になっていて、いつ辞めるかのタイミ…
福井・鯖江の眼鏡フレーム工場で、削りの音だけを頼りに生きてきた父親の話です。三歳の娘の難聴を告げられた冬、家じゅうの戸がいつも五センチだけ開けてあった理由と、台…
30歳になる少し前に離婚した。 その一年半後に現在の妻を紹介された。 高校を出て7年間、妻は俺の祖母の兄が営む田舎町の店舗に勤めていた。 安い給料なのに真面目に…
私と淳子は、結婚して社宅で暮らし始めました。 台所には四人がやっと座れる小さなテーブルを置き、そこにピカピカの二枚のお皿が並びます。 新しい生活が始まることを感…
その昔、大学の同級生の女の子にがりがりに痩せた子が居た。 細身の娘が好みだったので声を掛け、程なく恋仲に。 ある日、 「心臓に大穴が空いていて、苦しい。 子供も…
マニュエル・ガルシアは元気で頼もしく、近所でも働き者と評判の父親だった。 妻に、子供に、仕事に、将来、全て計画通りに運んでいた。 ある日、マニュエル・ガルシアは…
俺は入社以来、ひたすら数字を追い続けて来た。 毎日必死に働き、7年経った今では会社からも業績を認められるようになった。 何度か昇格をして、部下が何人か居る。 重…
朝、私は妻がよそった味噌汁を腕で払い、底の焦げた鍋を床に落とした。弁当も持たずに家を出た。夜、二階の窓に明かりがあり、玉ねぎとバターの匂いがした。妻がその鍋で四…
俺と嫁は、高校の時からの付き合いだった。 付き合った切っ掛けは、同じ委員会に所属したこと。 高校の文化祭で、俺と嫁は同じ仕事をした。 準備から事後まで、約一ヶ月…
嫁と娘が一ヶ月前に死んだ。 交通事故で大破。 単独でした。 知らせを受けた時、出張先でしかも場所が根室だったから、帰るのに一苦労だった。 でもどうやって帰ったの…
彼は肺がんで入院していて、余命宣告されていました。 本人は退院後の仕事の予定も入れ、これからの人生に気力を振り絞っていました。 私と彼は半同棲状態、彼はバツイチ…
結婚5年目に、ようやく待ちに待った子供が産まれた。 2年経って子供に障害があることが判明し、何もかもが嫌になって子供と死のうと思った。 そしたら旦那がメールが届…
あなたへ あなたが、戦地にお向かいになってからもう、何度目の夜でしょう。 娘も、こんなに大きくなって。 あなた、見ていてくれていますか? あの時、私はあなたに言…
私の夫は、結婚する前に脳の病気で倒れてしまい、死の淵を彷徨いました。 私がそれを知ったのは、倒れてから5日も経ってからでした。 夫の家族が病院に駆け付け、携帯電…
いしばし商店の棚には、丸い字の値札と、角ばった値札の二種類が並んでいました。奥さんが入院した週、ご主人はラジオの会社対抗クイズで九十八点と答えます。残りの二点が…