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懸命に育ててくれた母

母がもらったのは招待券ではなく優待券だった。球場の外のベンチで弁当を食べた日、電車で涙を流した母に私は「楽しかったよ」と言った。懸命に育ててくれた母が最期に残し…

覚えたてのひらがな

淡路島・江井の線香屋の家で、五つの長女が母の車に覚えたてのひらがなを刻みました。釘だと思っていた傷の幅は、私が胸ポケットに入れていた歯の欠けた櫛と、ぴたりと同じ…

自分らしく生きる言葉

書道教室の秋の課題は、自分らしく生きる言葉を半紙に一枚書くこと。いつも「平気」としか書かない小学五年のソウタと、「大丈夫」が口癖の私。書き損じの紙の裏に小さく残…

欲しかったオモチャ

長崎・波佐見の窯場の町で、小学四年だった私は店先のブリキの消防車を盗みました。その年の誕生日、父が押入れの奥の紙袋から出したのは、まったく同じ品でした。底に並ん…

おばあちゃんの愛

いつも肌色の湿布をくれるばあちゃんを、私はうとましく思っていた。受験の冬に湿布の束を断った私のもとへ、半年後に訃報が届き、母が台所で泣きながら告げた本当の理由。…