
商店街の端に、小さな花屋がある。
私が継いで三年になるが、まだ母の気配がそこここに残っている。
カウンターの下の引き出しは、ずっと鍵がかかったままだった。
母が死んだあと、鍵を探したが見つからなかった。だから引き出しもそのままにしていた。
※
ある日、古いエプロンのポケットに手を入れると、小さな鍵が出てきた。
引き出しを開けると、中には小さな封筒がひとつあった。
封筒の中には、種が入っていた。紙に包まれた、いくつかの小さな種。
裏に、母の字で書かれていた。
「あなたが生まれた日に、庭で咲いた花の種です。ずっと渡しそびれていました」
※
私は店の前の小さなプランターに、その種を植えた。
春になったら、何が咲くのかまだわからない。
でも毎朝、水をやるたびに、母が隣に立っているような気がしている。