母の引き出しに残された、小さな花の種

花と手紙

商店街の端に、小さな花屋がある。

私が継いで三年になるが、まだ母の気配がそこここに残っている。

カウンターの下の引き出しは、ずっと鍵がかかったままだった。

母が死んだあと、鍵を探したが見つからなかった。だから引き出しもそのままにしていた。

ある日、古いエプロンのポケットに手を入れると、小さな鍵が出てきた。

引き出しを開けると、中には小さな封筒がひとつあった。

封筒の中には、種が入っていた。紙に包まれた、いくつかの小さな種。

裏に、母の字で書かれていた。

「あなたが生まれた日に、庭で咲いた花の種です。ずっと渡しそびれていました」

私は店の前の小さなプランターに、その種を植えた。

春になったら、何が咲くのかまだわからない。

でも毎朝、水をやるたびに、母が隣に立っているような気がしている。

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