タグ: 別れ

幼馴染に彫った最後の舟

昭和の造船の町で、船大工見習いの俺は幼馴染の千代に想いを伝えたばかりだった。突然倒れた彼女の枕元で、俺は「いつか乗せて」と約束した小さな木の舟を彫り続けた。最後…

撮らせてくれない一枚の写真

撮らせてくれない一枚の写真——昭和の雪国の城下町に生きる若い写真師と、三つ年上の仕立ての女の物語。胸の病を隠し、笑って嘘の別れを選んだ人が遺した黒い台紙と最後の…

兄が遺した鉛の活字

昭和の終わり、東京で学ぶ私は、活版印刷の植字工だった兄をどこか恥じていた。兄弟の絆の意味も知らぬまま。やがて兄は、見えなくなった目で指の記憶だけを頼りに私の名前…

蛍さんがくれたお手玉

雪深い湯治場に冬だけ来ていた、足を患う蛍さん。退屈な谷の子供たちに、蛍さんはお手玉と歌を教えてくれた。四十年後、宿を畳む日に妹が届けた一冊の手帳が明かす、本当に…

朝霧をわたる舟の灯り

心に灯る感動の泣ける話。行くあてをなくした娘を拾ったのは、霧深い湖の老いた渡し守だった。夜明けごとに舟提灯を灯し、湖をわたり続けた爺さま。その灯りがある限り、人…

九官鳥のおかえり

九官鳥のおかえりという二言だけが、四十年たった今も耳の奥に残っている。北の山あいの谷へ単身赴任した若き日、凍える独りの夜を支えてくれた一羽の鳥に、私はある約束を…

桜を綴じた最後の手紙

昭和の城下町で時計店を継いだ男と、北の港町へ移っていった人。季節の押し花を挟んだ文通は七年目の春に途絶え、誤解を抱えたまま二十数年が流れた。出されることのなかっ…

妻が拾った4380の音

新聞配達25年、誰にも見られない仕事だと思っていた。亡き妻が毎朝海岸で原付の音を聴き、一日一個の貝殻を拾い続けていたことを、漬物樽の中に残された四千の貝殻と犬へ…

実話|師匠の最後の鋏の音

山形・庄内の訪問理容師として働く私が、九十歳の師匠の最期に頼まれた一度きりの散髪。雪の朝、震える鋏が結んだ六十年越しの師弟の絆を描く実話短編。泣ける話・感動の物…