タグ: 実話

恩師の体温計

戦後すぐの山あいの貧しい村で病弱だった私の脇に、恩師の体温計を毎日挟みに来てくれた矢島先生。四十年後、記憶を失い私を忘れた先生に、私は同じ体温計で五分の検温を続…

親方の革砥を継いだ夏

昭和の終わり、北関東の城下町で三代続いた床屋を継いだ続かない俺。大叔父である先代から受け継いだ親方の革砥と、三十年分の常連カルテだけを頼りに刃を握る。嵐の朝、シ…

実話|紅花染めの白猫

昭和六十年の米沢、紅花染めの白猫を私はいつも追い払っていた。寡黙な親方が四十年誰にも告げず欠けた茶碗で養い続けてきた本当の理由は、空襲で失った五歳の妹『文子』へ…

ばあちゃんの真空管

認知症で僕の名前を忘れた祖母。それでも深夜のAMラジオから僕の声が流れた瞬間、彼女は『ホタくん、また喋ってる』と呟いた──真空管ラジオが繋いだ最後の言葉を綴る、…

妻が拾った4380の音

新聞配達25年、誰にも見られない仕事だと思っていた。亡き妻が毎朝海岸で原付の音を聴き、一日一個の貝殻を拾い続けていたことを、漬物樽の中に残された四千の貝殻と犬へ…

実話|師匠の最後の鋏の音

山形・庄内の訪問理容師として働く私が、九十歳の師匠の最期に頼まれた一度きりの散髪。雪の朝、震える鋏が結んだ六十年越しの師弟の絆を描く実話短編。泣ける話・感動の物…

母の常連ノート

亡き母が食堂で15年間綴り続けた『お客さんノート』には、常連客の好物や家族の話が几帳面に記されていた。最後の一冊の表紙の裏に、私の名前があった――母の静かな愛情…

父が頭を下げた人

父が急逝し、小豆島の小さな醤油蔵を継いだ俺の前に、四十年勤めた女性が辞表を出した。父と彼女が交わした四十年前の約束を辿った時、机の底から出てきた一冊のノートが胸…

届かない手紙の宛先

不器用な父との別れと、年月を超えて届く一通の絵葉書を描く感動の短編。新潟の雪深い古書店『松露堂』を舞台に、店主と詩集を借りる中年男性が紡ぐ、家族の和解の物語。届…

父のカメラに残ったもの

父の遺品から見つかった古いカメラ。未現像フィルムを現像すると、そこには俺が撮影した五島列島の同じ場所が写っていた──泣ける話・感動する実話。…