一生忘れない結婚式
萩の夏みかん菓子屋に十八で住み込んだ私が、亡き師匠の遺した一本のテープを聞いたのは、その娘の結婚式の日でした。二十年ものあいだ剝がれたラベルの名前を読み違えてい…
続きを読む:一生忘れない結婚式萩の夏みかん菓子屋に十八で住み込んだ私が、亡き師匠の遺した一本のテープを聞いたのは、その娘の結婚式の日でした。二十年ものあいだ剝がれたラベルの名前を読み違えてい…
続きを読む:一生忘れない結婚式妻の入院中、北海道十勝の酪農家である私が、息子の遠足の弁当を作ることになりました。牛乳を入れすぎて崩れた卵焼きと、まだ字の書けない四歳が渡してくれた一枚の手紙。…
続きを読む:とうちゃんの卵焼き妻の連れ子だった娘を、鬼瓦を彫る職人の私は十二年かけて育てました。血の繋がらない父娘に向けられた世間の冷たい目、そして結婚式で娘が静かに明かした「鬼の裏に彫られ…
続きを読む:血の繋がらない娘尾道の坂下の小さなパン屋に毎週日曜、若い父と三歳の男の子が来る。注文はクリームパンと『おかーちゃんのぶん』。眠り続ける母への贈り物と思われたパンに隠された、三歳…
続きを読む:クリームパンの親子セメントの町で三交替に就いた兄は、夜勤明けの朝、必ず弟の運動靴を爪先だけ外へ向けて直してから上がりました。その小さな癖の本当の意味と、閉めた覚えのない扉。半年前…
続きを読む:半年前の俺へ血の繋がらない兄が、身寄りを失った中学生の私を引き取り、大学まで出してくれました。新潟三条の研屋で、兄が十年間だけ研がずにいた母の菜切り包丁。そこには、あと一度…
続きを読む:俺を育ててくれた兄貴両親が消えた冬、十一歳の兄は六歳の弟をたった独りで守り抜いた。万引きで捕まり引き離されて四十年、閉店間際の市場を訪ねた弟は、乾物屋の老婆から兄の秘密を聞かされる…
続きを読む:兄ちゃんはヒーローだった記録的な大雪で三日間も孤立した郡上の集落。配給の列で壊れたラジコンを抱えた男の子に、中学生の少年が自分のものを差し出しました。その底に残っていた四角い跡が語る、…
続きを読む:サンタさんから頼まれた母が遺したのは、ひらがなだけの短い手紙でした。押入れの箱の底から出てきた十九枚の書き損じと、右手の親指だけが少し太い七組の手袋。手袋の町で育った私が、二十八年目…
続きを読む:せかいでいちばんのしあわせ転校先の諏訪の寒天場で、亡くなった前の住人の白い猫と暮らした少女がいました。名前を呼んでも一度も返事をしなかった理由は、四十九日のあとに隣家の奥さんの一言で分か…
続きを読む:白猫のみーちゃん小学生の頃に飼っていた白猫は、私が家を空けた冬に用水路で亡くなりました。就職して二年目、泣きながら歩く夜道に現れた一匹の白い猫。越前の眼鏡の町を舞台に、なぜあの…
続きを読む:待っていてくれた猫保健センターの母子教室に迷い込んできた、おばあさんと二人の男の子。袖口のほつれを見もせずに継いだその手つきの意味を知ったのは、半年後、桐生の織物工場の休憩所でし…
続きを読む:おばあちゃんが注いだ愛情浜に流れ着いた浮子は底を上にして置く——それが加瀬浦の決まりごとでした。あの子が繰り返した「うちの印、覚えとって」の意味を、私は四十年かけて知ります。約束の前日…
続きを読む:震災で亡くした彼女ラクリマを応援する
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