あなたは三つ目の渡し石を据え直した

あなたは三つ目の渡し石を据え直した

大好きなあなたへ。

今朝、郵便受けの縁に、うっすらと霜が降りていました。

山の上の観測所にも、そろそろ初雪の便りが届く頃でしょうか。

あなたがいなくなって、これが四度目の冬になります。

目が覚めてすぐ、私は沢まで下りました。

三つ目の渡し石は、まだ水の上に出ていました。

あなたが毎朝そうしていたように、水を見おろして、それから家に戻りました。

私は今日も、あなたに悪態をつくために、この手紙を書いています。

読みたくなければ、読まなくて構いません。

どうせあなたは、最後まで読むのでしょうけれど。

今日は、あなたが残していったものの話をします。

櫛のことでも、野帳のことでもありません。

いちばん役に立ったものの話です。

それが何だったのかを、私は四年かかって、ようやく知りました。

知ったあとで、私はまた、あなたに腹を立てています。

そういう手紙だと思って、読んでください。

台所の窓から、稜線がよく見えます。

双子は、まだ布団の中です。

薪をくべると、味噌汁の湯気が窓を白くします。

この湯気の向こうに、あなたがいた朝が、たしかにありました。

娘は六つになりました。

息子も六つです。

当たり前ですね、双子ですから。

この「当たり前ですね」を言う相手が、私にはもういません。

だから、紙に書いているのです。

昨日、娘が沢で石を数えていました。

ひとつ、ふたつ、みっつ、と指で押さえて、三つ目のところで足を止めたのです。

誰が教えたわけでもありません。

私は麦茶の水筒を提げたまま、しばらく動けませんでした。

「おかあさん、あの石、なんで一個だけ低いの」

娘が指さしたのは、まさしくその一つでした。

私は答えを持っていました。

けれど、うまく声にならなくて、うん、とだけ言いました。

いつか話します。

あなたがどれだけ用心深くて、どれだけ言葉の足りない人だったかを。

あなたに似ています。

似すぎています。

そのことで、まる一日、腹が立ちました。

腹を立てながら、夕飯の卵焼きに、砂糖を多めに入れてしまうのです。

息子が「おかあさん、これ甘い」と言いました。

「甘いから、うちの卵焼きなの」

そう答えてから、私は箸を置いて、しばらく天井を見ていました。

同じ答えを、どこかで聞いた覚えがあったからです。

あなたの声で、聞いた覚えが。

この家は、あなたが置いていった言葉で、まだ回っています。

そういう毎日を、こちらで送っています。

甘い卵焼きの土曜

あなたと初めて会ったのは、霧の深い高原の町の、小さな食堂でした。

両親を早くに見送った私は、遠縁の夫婦がやっている店で、住み込みの手伝いをしていました。

朝は仕込みの湯気で窓が曇り、昼は登山客の泥だらけの靴が土間に並ぶ、そんな店です。

私の持ち場は、厨房の隅の卵焼きでした。

砂糖を多めに入れる、田舎の甘い卵焼きです。

あなたは毎週土曜の昼にだけ山を降りてくる、よく日に灼けた観測員さんでした。

決まって窓際の席に座り、決まって焼き魚の定食と、卵焼きをひと皿。

あんまり毎週なので、一度だけ念を押したことがありましたね。

「うちの卵焼き、甘いですよ」

あなたは箸を止めて、真顔で言いました。

「知っとります。甘いから、毎週来とるんです」

それだけ言って、耳まで赤くなって、あとは黙って食べている。

変な人だと思いました。

でも、あなたの箸の持ち方があんまり綺麗で、私はつい、厨房から見てしまうのでした。

女将さんが、私の背中を肘でつついて笑いました。

「あんた、土曜だけ卵の数を間違えるね」

「間違えてません」

「二つ多いよ」

その二つが誰のためだったのか、私は最後まで認めませんでした。

霧の濃い日は、あなたの上着から雨の匂いがしました。

山の雨は、町の雨よりすこし冷たい匂いがする。

私はそれを、あなたで覚えたのです。

あなたは山の観測所で、雨の量と、風の速さと、雲の高さを測る人でした。

「山の機嫌を、数字に写しとる仕事です」

そう言ったくせに、数字にできないものは、からきし苦手なのでしたね。

プロポーズの言葉を、私は一生忘れません。

三年目の春、店じまいのあとの縁台で、あなたは両手で湯呑みを包んだまま言いました。

「明日は晴れです。明後日も、たぶん晴れ」

「はあ」

「その先は、わかりません。わからんですけど……あんたと一緒なら、どっちでも、ええんです」

天気予報だか何だかわからないまま、私は頷いていました。

あなたの膝の上に、小さな布の包みがあったからです。

開くと、桜の木を削った櫛が出てきました。

歯の一本一本が驚くほどなめらかで、木の温みが、まだ残っているようでした。

夜勤の合間に、ひと月かけて彫ったのだと、あとで所長さんが教えてくれました。

「あいつ、指の皮をむいて、絆創膏だらけの手で風速計を読んどったぞ」

そう言って、所長さんは自分のことのように笑うのでした。

戸締まりはしたか

所長さんの話を、しておかなければなりません。

観測所の主のような人で、あなたの師匠で、親のいない私たち二人の、親代わりのような人でした。

結婚式のとき、父の席に座ってくれたのは所長さんでしたね。

「わしでええんか」と何度も聞くので、私は何度も頭を下げました。

式の朝、所長さんは慣れない礼服の襟を直しながら、小さな声で言いました。

「あんたの父さんの代わりは、わしにも無理じゃ。じゃが、席くらいは温めておける」

あの人は、そういう人でした。

官舎の煙突が詰まれば直しに来て、漬物を漬けすぎては置いていく。

正月には奥さんと二人で来て、狭い土間で膝を突き合わせて雑煮を食べました。

奥さんは餅を焼くのが下手で、いつも一つだけ真っ黒にする人でした。

その黒い餅を、所長さんが黙って自分の椀に入れるのです。

私はその手つきを見るのが好きでした。

あなたの夜勤の晩には、必ず一度、電話をくれました。

「戸締まりはしたか。しとるなら、ええ」

それだけの電話を、律儀に、毎回。

受話器を置いたあと、私はいつも少しだけ笑ってしまうのでした。

血のつながりというものを知らずに育って、それでも家族にはなれる。

私はそれを、あの山で教わったのです。

官舎での暮らしは、静かで、よく笑う毎日でした。

明け方、風速計の椀がまわる音で目を覚まし、薪の爆ぜる音で味噌汁の火加減を計る。

あなたは夜勤明けでも、私の味噌汁だけは残さない人でした。

「うまい」と言うのが照れくさい日は、椀の底を、こつんと軽く鳴らす。

あれは、あなたなりの拍手だったのでしょう。

愚痴というものを、あなたはどこかの沢に置いてきた人でした。

凍える観測の夜も、報われない報告書の日々も、家では一言も言わない。

そのくせ、「ありがとう」と「好きじゃ」だけは、出し惜しみをしない。

「今日も卵焼きが甘い。ありがとう」

「それ、褒めてます?」

「褒めとる。世界でいちばん」

ばかみたいなやり取りを、私は何百回でも、やり直したいのです。

櫛は鏡台のいちばん上の引き出しに置いて、毎晩使いました。

髪を梳くたび、かすかに桜の匂いがするような気がしました。

それはきっと気のせいで、でも私は、その気のせいごと大事にしていました。

職人の手の癖が道具のほうに残ることを書いた不格好な湯呑みと最後の壁という話を、のちに読んだことがあります。

あなたの手の記憶は、私の髪の中にありました。

朝に踏む石の順番

あなたには、朝の順番がありました。

起きて、顔を洗って、下駄をつっかけて沢まで下りる。

渡し石をひとつ、ふたつと踏んで、三つ目の渡し石に片足をかけ、そこで水を見おろす。

それから山へ上がっていく。

雨の日も、風の日も、同じでした。

私は最初、あなたの験担ぎか何かだと思っていました。

「石、好きなの」

「好きというか、目盛りじゃ」

「目盛り」

「三つ目が見えとるうちは、山は機嫌がええ」

それだけ言って、あなたは笑って行ってしまう。

数字に写しとる仕事の人が、石を目盛りにしているのが、私にはおかしかったのです。

台風が来た年の晩を、覚えていますか。

雨戸が鳴りっぱなしの夜中に、あなたは合羽を着て外へ出ていきました。

「どこ行くの」

「石を見てくる」

「こんな晩に」

「こんな晩じゃけ、見とくんじゃ」

三十分ほどして、あなたは全身から水を垂らして帰ってきました。

「どうだった」

「二つ目まで沈んだ。三つ目は、もう見えん」

そう言いながら、あなたは安心したような顔をしていました。

いま思えば、あの晩にあなたが確かめていたのは、沢のことではなかったのでしょう。

秋の初め、二人で沢沿いの道を歩いたとき、あなたは急に立ち止まって耳をすませました。

「どうしたの」

「……いや、なんでもない。あのな、ひとつだけ覚えといてほしいことがある」

あなたは、いつになく真剣な目をしていました。

「山ではな、水の音が変わったら、すぐ逃げること。上へ、上へ逃げること」

「音が、変わる?」

「濁る、いうんかな。石の転がる音が混じって、低うなる。岩の匂いがしたら、もう遅い」

「わかった。……でも、あなたが一緒のときは、あなたが教えてね」

「わしがおらん日のために、言うとるんじゃ」

あのとき、あなたの横顔を、もっとよく見ておけばよかった。

あなたは山の全部を疑って、山の全部を愛している人でした。

雪の晩は、二人で窓の結露に指で絵を描きましたね。

あなたの描く山はいつも本物そっくりで、私の描く山はいつも卵焼きみたいで。

あなたはそれを「うまそうな山じゃ」と褒めるのでした。

氷点下の未明、あなたは百葉箱の霜を手袋ごしに払い、素手に戻って鉛筆の先を舐めて数字を書きつける。

戻ってくると、耳と鼻の頭だけ真っ赤にして、「ただいま」の代わりに白い息を吐くのです。

私は湯たんぽを抱かせて、かじかんだ指を、私の両手で挟んで温めました。

「なんで、そこまでして測るの」

一度だけ、聞いたことがあります。

あなたは少し考えて、こう言いましたね。

「誰かがずっと測っとるけん、明日の天気は当たるんじゃ」

「名前は残らんでもええ。……誰かのままで、ええ仕事なんじゃ」

名前の残らない仕事を、あなたは背筋を伸ばして愛していました。

私はその横顔に、何度目かわからない惚れ直しをして、黙って番茶を注ぎました。

音が変わった沢

あの日のことを書きます。

四度目の秋にして、ようやく、手が震えなくなりました。

十月の連休、長雨がやっと上がって、観測所のみんなで沢歩きに出た日のことです。

所長さんの発案でした。

「たまには、測る道具を置いて、山に遊んでもらえ」

空は憎らしいほど晴れて、沢の水は光の粒を撒いたようでした。

私は張り切って、卵焼きを三段のお重に詰めましたね。

あなたは何度も蓋を開けようとして、所長さんに手の甲をはたかれていました。

昼餉の岩場で、みんなでそれを食べました。

誰かが「奥さん、店を出せる」と言い、あなたが「わしの店じゃ」と真顔で返して、沢中に笑い声が響きました。

幸せに形があるなら、あの日の、湯気の消えたあとの甘い匂いだったと思います。

帰り道、渡し石のところで、私は足を滑らせました。

転びはしなかったけれど、髪に挿していた櫛が、はずみで浅瀬に落ちたのです。

拾おうと屈んだ私を、あなたが止めましたね。

「ええ、濡れる。あとでわしが拾うけん、先に渡っとれ」

列の後ろにいた所長さんが、「わしのほうが近い」と笑って、浅瀬のほうへ降りていきました。

そのときでした。

あなたが、ふいに黙ったのは。

あなたは上流の空を見て、それから沢の面を見て、顔色を変えました。

「……音が、変わった」

私にはまだ、何も聞こえませんでした。

鳥の声と、水の音と、みんなの笑い声しか。

「上がれ! 全員、上へ! 走れ!」

あなたの声が、山を叩きました。

みんなが弾かれたように斜面に取りつき、あなたは最後尾で、遅れた私の背中を押し上げました。

「振り向くな! 上じゃ!」

私の指が木の根を掴んだのと、世界が濁った音に呑まれたのは、ほとんど同時でした。

山が、川の形をして降りてきたのだと、後から思いました。

石と水と折れた木の匂いが、いちどきに膨れ上がって。

振り向いたとき、あなたの姿は、もうありませんでした。

櫛のほうへ降りていた所長さんの姿も。

あなたを捜す三日間のことは、切れ切れにしか覚えていません。

消防団の長靴が土間に並び、食堂の夫婦が握り飯を山ほど炊きました。

私は沢に降りることを許されず、東屋の柱につかまって、濁った水面をずっと見ていました。

あなたが見つかったのは、三日後の朝です。

ずっと下流の、若い柳の根元で、眠るような顔をしていたと聞きました。

私はあなたの冷たい手を握って、初めて大きな声を出して泣きました。

所長さんは、一週間後に見つかりました。

その右手には、泥を吸った桜の櫛が、割れもせずに握られていたそうです。

駆けつけた奥さんが、その手をさすって、「この人らしいわ」と言って笑い、それから声を上げて泣きました。

櫛を、奥さんは形見にせず、私に返してくれました。

「あの人が最後まで放さんかったんはね、これが、あんたの髪に戻りたがっとったからよ」

拾わんでよかったのに。

あんな櫛、なんべんでも、あなたに彫らせればよかったのに。

あなたもあなたです。

人を押し上げておいて、自分は残るなんて。

雨の量も風の速さも測れたあなたが、自分の重さだけ、測り間違えましたね。

私はしばらく、水の音が聞けませんでした。

蛇口の水も、湯呑みに注ぐ音も、だめでした。

一度は、ちゃんと壊れたのだと思います。

食堂の夫婦が、毎日、粥を炊いてくれました。

観測所の若い人たちが、交代で官舎の雪を下ろしてくれました。

壊れた私は、そういう手のひらの上で、すこしずつ、継ぎ直されていきました。

野帳の余白の字

四十九日が過ぎた頃、体調を崩して病院へ行ったら、先生が笑って言いました。

「おめでたですよ。それも、お二人」

いたんですよ。

あなたと私の子が、それも双子で。

あなたが山にいるあいだに、私のところへ、二人も来ていたんですよ。

なんで抱いてやらないんですか。

本当に、最後まで、ばかな人ですね。

春に生まれた女の子には、あなたの好きだった山の名から一字をもらいました。

男の子には、「風」の字をつけました。

あなたが毎日測っていたものの名前です。

これで文句はないでしょう。

奥さんは帰りぎわ、土間で靴を履きながら言いました。

「あんた、あの人らのこと、恨んでええんよ」

「恨んでます」

「ほんなら、ええ」

恨んでいます、と口に出せた日から、私はまた、ごはんを炊けるようになりました。

怒るというのは、まだその人を勘定に入れているということなのだと思います。

一周忌の日、私は若い観測員さんに付き添われて、初めて観測所に上がりました。

あなたが三百六十五日、空を見上げていた場所です。

机の上に、あなたの野帳が残っていました。

雨量、風速、雲量。定規で引いたような数字の列。

「これ、奥さんに見せたくて」

若い人が、最後の頁のほうを開いてくれました。

数字の脇の余白に、時々、豆粒みたいな字があるのです。

「晴。卵焼き、甘し」

「霧深し。妻、よう笑う」

「初雪。早う帰る」

私は野帳を抱えて、しばらく顔を上げられませんでした。

あなたは毎日、空と一緒に、私まで記録していてくれたんですね。

そのあとで、若い人が言いにくそうに、もうひとつ教えてくれました。

「班長は、官舎の前の沢も、ずっと測っとりました」

「え」

「所の雨量計とは別にです。手帳の裏に、水位だけ」

「なんのために」

「上流の雨より、あの沢のほうが半刻早う濁るんです。班長が、何年もかけて自分で確かめた」

そのときの私は、まだ意味を取りそこねていました。

測るのが好きな人なのだ、とだけ思ったのです。

帰りの車で、若い人が、前を向いたまま言いました。

「班長、よう言うとりました。天気は当てられんでも、逃げる合図は作れる、て」

その言葉の置き場所が、私にはまだ分かりませんでした。

櫛は、その日から、私の鏡台に戻しました。

歯が一本だけ欠けたけれど、直さずにおくことにしました。

それは、あなたと所長さんが最後に触れたものの形だからです。

毎晩、娘の髪をあの櫛で梳いています。

「さくらの匂いがする」と、娘は言います。

気のせいだよ、と私は言いません。

髪を梳く道具が人の代わりに残ることを書いた椿油の小瓶を今も開けられないという話を、いつか娘に読ませたいと思っています。

息子は最近、箸の持ち方があなたに似てきました。

誰も教えていないのに、椀の底を、こつんと鳴らす癖まで同じです。

三つ目の渡し石

この夏、双子を連れて、沢沿いの遊歩道を歩きました。

四年ぶりの沢でした。

子どもたちは水切りの石を探し、私は木陰で、麦茶の支度をしていました。

ふと目を上げたとき、三つ目の渡し石が、水に隠れかけていました。

空は晴れていました。

音は、まだ変わっていませんでした。

それでも私は、二人の手を掴んで、坂の上の東屋まで一息に駆け上がったのです。

数分後、上流の夕立で膨れた濁り水が、さっきまで子どもたちがいた石場を、静かに舐めていきました。

東屋の柱につかまって、私は膝が笑うのをこらえていました。

音を聞いて逃げたのではありません。

石を見て逃げたのです。

秋になって、私はもう一度、沢に下りました。

ひとつ、ふたつ、みっつ。

三つ目の渡し石に片足をかけて、初めて、あなたと同じ高さから水を見おろしました。

そして、気がついたのです。

三つ目の石だけが、ほかより低いところに据え直してありました。

ふたつ目までは、大人の膝ほどの高さで水の上に出ている。

三つ目だけが、くるぶしの上あたりで沈みかけている。

沢の石は、上流から下流へ、少しずつ低くなるものです。

けれどあの一つだけは、並びから外れて、明らかに沈めてありました。

その足で観測所に電話をかけて、若い人に聞きました。

「班長が、最後の年の春に据え替えたんです。ひとりで、半日かかって」

「半日」

「奥さんの草履の高さを、土間で測っとりましたよ」

低い石は、私が一人で逃げる朝のために、あなたが据え直したものでした。

あなたの目盛りは、あなたの膝ではなく、私の足首の高さに合わせてあったのです。

三つ目が水をかぶるのは、あなたの基準ならまだ早い。

私の基準では、そこがもう、逃げどきになる。

あなたは、自分がいない朝を、ずっと前から計算に入れていた。

その計算だけは、外れませんでしたね。

石の上にしゃがんで、私はみっともなく声を出して泣きました。

まだ守る気ですか。

あなたは本当に、律儀な人ですね。

石を沈めるくらいなら、その半日で、もう一度だけ卵焼きを食べに降りてくればよかったのに。

悪態の種が尽きないのは、思い出が尽きないせいです。困った人ですね。

明日の朝も、沢に下ります。

今夜も、山の上は晴れですか。

おやすみなさい。

泣ける話・感動する実話まとめ|ラクリマ

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