タグ: 短編

幼馴染に彫った最後の舟

昭和の造船の町で、船大工見習いの俺は幼馴染の千代に想いを伝えたばかりだった。突然倒れた彼女の枕元で、俺は「いつか乗せて」と約束した小さな木の舟を彫り続けた。最後…

雪の峠で握られた手

昭和四十四年の豪雪の峠。乗合バスが横転し、七歳の姪は座席の下に閉じ込められた。半狂乱の私を救い出したのは、黄色い合羽の若い除雪作業員だった。背中を裂かれながら笑…

船頭がくれた欠けた飯茶碗

十七の冬、厳しい父と衝突し家を捨てた俺は、雪の北の港町で行き場を失った。飯にありつけず座り込む俺に声をかけたのは、腰に藍色の手ぬぐいをさげた老いた船頭だった。名…

義父が黙って巻いた時計

駅前の小さな時計店を継いだ婿の俺と、一度も直し方を教えてくれない不器用な義父。国家試験の合格を病室から不器用に祝う電話と、義父が四十年止めたままの形見の振り子時…

父が紋付の裏に遺した言葉

昭和の城下町の貸衣装店を舞台にした泣ける話。先に逝った父の黒紋付を、息子の祝言のために仕立て直してほしい——そう持ち込まれた一枚の紋付の裏地から、二十年眠ってい…

風鈴職人と小さなお客さん

昭和の港町を舞台にした泣ける話。風鈴職人の私のもとへ、海から戻らぬ父のために、泣いてばかりの母を笑わせたいという男の子が訪れた。豆粒ほどの小さな風鈴に託した祈り…

撮らせてくれない一枚の写真

撮らせてくれない一枚の写真——昭和の雪国の城下町に生きる若い写真師と、三つ年上の仕立ての女の物語。胸の病を隠し、笑って嘘の別れを選んだ人が遺した黒い台紙と最後の…

番台の親父と椿油の少年

昭和の城下町の銭湯を舞台にした泣ける話。番台を継いだ俺が、だらしないと決めつけた路地裏の少年。先代が遺した帳面には、母を見送り独りで長湯をする子の姿が記されてい…

機織りの伯母がくれた杼

昭和の織物の町で、無口な機織りの伯母に育てられた私。家業を継ぐのを拒み、ひどい言葉を投げつけた後、伯母は病に倒れた。和解できぬまま迎えた別れの間際、震える手で渡…

猫が運んだ茶のボタン

昭和の終わり、雪深い町の小学校。夜ごと窓辺に牛乳を置く独りの女教師と、一匹の三毛猫。猫の恩返しのように、口を閉ざした転校生の心が、少しずつほどけていきます。一つ…

親方の革砥を継いだ夏

昭和の終わり、北関東の城下町で三代続いた床屋を継いだ続かない俺。大叔父である先代から受け継いだ親方の革砥と、三十年分の常連カルテだけを頼りに刃を握る。嵐の朝、シ…