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青い丸の約束

夜勤タクシー運転手として三十年。退職の日、妻が描いた古い地図を見つけた。赤い丸は二人で行った場所、青い丸はいつか行きたい場所。青い丸は一つも叶っていなかった。…

妻がずっと書いていた返事

大分・長湯温泉の朝、四十年前の琺瑯の弁当箱を開けると、底に色褪せた付箋が一枚だけ残っていました。包みの結び目がいつも左に寄っていた理由、妻が四十年切らさなかった…

未完のマフラーと妻のノート

調律師の保坂慎二は、妻の美和が残した未完のマフラーの紙袋を、三年ぶりに押し入れから下ろした。三年のあいだ開けられなかった袋の底の小さなノートには、編み図と最後の…

23年間のリセット

高校の文化祭で出会い、十九歳で夫婦になった俺と嫁。仕事に没頭して会話が消えた数年、手帳に残るハートで囲んだK、そして離婚届に震える二人の字。23年間のリセットの…

忘れられない暗証番号

片胸のない彼女と決めた暗証番号は、二人の誕生日を足した〇五一二。余命を告げられても笑って過ごした日々のあと、彼女が旅立って半年で届いた診断書の時刻の欄に、その暗…

角ばった値札は下の段にあった

いしばし商店の棚には、丸い字の値札と、角ばった値札の二種類が並んでいました。奥さんが入院した週、ご主人はラジオの会社対抗クイズで九十八点と答えます。残りの二点が…

悲しい時は泣くんだよ

秋田・大館の曲げわっぱ工房で、妻は樺縫いの最後のひと針だけを、毎晩かならず翌朝へ残していました。妻を失った冬、四つになる娘の一言と、老いた職人の静かな証言が、そ…

二つの指輪

三度目の流産に泣く妻の隣へ、産科の待合室で見知らぬ五分刈りの男の子が二つの指輪を差し出しました。水色だけが白く曇っていた理由を知ったのは、六年後の祭りの夜のこと…