会社対抗クイズ

公開日: 夫婦 | 心温まる話

結婚指輪(フリー写真)

近所に住んでいるご夫婦の話です。

その夫婦には子供が居らず、そのせいか私は子供の頃から可愛がってもらっていました。

おじさんは無口な土建屋の事務員。おばさんは自宅で商売をしていて、雑貨から野菜など何でもあるミニスーパーのような店で、朝から晩まで年中無休で働いている人でした。

当然、晩ご飯なども、おじさんが19時頃に帰って来ても、食べられるのは21時過ぎというのはしょっちゅうの事でした。

洗濯物も溜まる、掃除も毎日できない、休日も一緒に過ごせない…。

おばさんは結婚して以来、そのことを心の中で申し訳ないと感じていたそうです。

今年の秋、おばさんは長年の疲れからか体調を崩し、一週間の入院をすることになりました。

コンビニがあるから大丈夫だとおじさんは言っていましたが、毎日持って行くお弁当や食事の支度さえできず、迷惑ばかり掛けて申し訳ないと落ち込んでいたようでした。

おばさんが入院した4日後、おじさんの会社にラジオ番組の取材が来ました。

取材と言うかローカル番組のコーナーの一つで『会社対抗クイズ』みたいなものです。

私は前日に知っていたので、翌日ラジオを持ってお見舞いに行きました。

休憩室のような場所で、持って行ったラジオを二人で聞きました。

そのクイズ自体におじさんは登場しませんでしたが、話の流れで

「自分の奥さんは○点だ」

と言うようになって行きました。

それぞれが、

「結婚後、20キロ増えたから50点」「料理が下手だから40点」

と悪く言って、笑いを取る雰囲気になっていました。

私は『あ、やばいかな…』と思い始め、おばさんも何か気まずい顔をしていました。

ついにアナウンサーがおじさんの作業服のネームを呼びました。

「○○さんの奥さんに点数を付けるなら何点ですか」

おばさんが小さな声で、

「20点…」

と呟いた瞬間、

「98点!…だな。あれでなきゃワシの嫁は無理だ」

おばさんを見ると、両手に顔をうずめて泣いていました。

今年一番感動した出来事です。

関連記事

月

三度の祈り

それは今から数年前、俺の人生における三度の神頼みの始まりでした。 最初は七歳の時、両親が離婚し、厳しい祖父母の元へ預けられた時のことです。 彼らから「お前のせいで別れた」…

手を繋いで歩く夫婦(フリー写真)

たった一つの記憶

私の夫は、結婚する前に脳の病気で倒れてしまい、死の淵を彷徨いました。 私がそれを知ったのは、倒れてから5日も経ってからでした。 夫の家族が病院に駆け付け、携帯電話を見て私の…

手紙を差し出す女の子(フリー写真)

パパと呼ばれた日

俺が30歳の時、一つ年下の嫁を貰った。 今の俺達には、娘が三人と息子が一人居る。 長女は19歳、次女は17歳、三女が12歳。 長男は10歳。 こう言うと、 …

桜

再会と再出発

3年前、私は桜が開花し始める頃に自殺を考えていました。失恋、借金、会社の倒産と様々な問題が重なり、絶望していたのです。両親とも絶縁状態で、孤独を感じていました。 最後に何か美味…

空(フリー写真)

お盆のある日

私には4年前、赤ちゃんの時に亡くなった子どもがいました。 昨年の8月のお盆のある時、上の娘が空を見上げて 「お母さん、空見てみて。ほら、空の雲の間に光っているところあるで…

観覧車

天使の誕生日に

秋の深まりを感じながら、私たちは数年ぶりにディズニーランドを訪れました。ディズニーランドのスタッフの皆様、いつも夢のような時間をありがとうございます。 この日は、特別な日でした…

月明かり(フリー写真)

お月さんの下で

昨日、彼女の家の犬が死んだ。 彼女の家は昔、彼女の兄貴が高校生という若さで自殺してから、両親も彼女もうつ病になって酷い状態だったらしい。 そんな時に引き取って来た犬だったそ…

ウェディングドレス姿の女性(フリー写真)

可愛い一人娘

この前、一人娘が嫁に行った。 目に入れても痛くないと断言できる一人娘が嫁に行った。 結婚式で「お父さん、今までありがとう。大好きです」と言われた。 相手側の親も居た…

結婚式(フリー写真)

二人目の子供

俺が結婚したのは20歳の頃だった。当時、妻は21歳。学生結婚だった。 二年ほど貧乏しながら幸せに暮らしていたのだが、ある時、妊娠が発覚。 俺は飛び上がるくらい嬉しく、一人で…

乾杯(フリー写真)

変わらないもの

今まですれ違いが多くて、なかなか時間を取って話す機会のなかった父。 そんな父と時間を取って話す機会を得たのは、恥ずかしながら仕事でミスを連発して会社から叱責を何度も受けていた時…