タグ: 短編

どんぐり

餌をやると、翌朝きまって沓脱ぎ石の右の端にどんぐりが一つ置いてある。お礼だと思っていました。けれどその置き場所には、私が越してくる三年も前から決まっていた理由が…

母の匂いと記憶

三年ぶりに帰省した俺は、家の事情で母の隣に布団を並べることになった。布団に染みた陽の匂いの奥にあった薄荷と糸の匂いが、忘れていた記憶を呼び覚ます。指のあかぎれ、…

母ちゃんの記憶

四つで母を亡くした俺に残った記憶は、ブランコの鎖の音だけだった。右がカ、左がコ。三十年後、親父が病室でこぼした一言と、押入れの缶から出てきた一枚の短冊が、あの夕…

気付かないふり

全盲の彼女に告白した夜、涙を隠せない私に、彼女はそっと気付かないふりをしてくれました。手術で光を取り戻した彼女が最後にくれた一言。潮の匂う港町の小さな電気店を舞…

みんな同じ

俺の娘は四つ。妻は娘を産んですぐ家を出て、母の話を避け続けてきた。ある夕方の電車で、片腕のない人を指さした女の子に、その母親が静かに語りかける。みんな同じじゃな…

夕焼けの絵葉書

病弱な少女から届いた、一枚の夕焼けの絵葉書をめぐる、泣ける話の短編です。牛乳配達の朝に交わした小さな約束、木箱越しに続いた言葉のやり取り、同じ空を別々の窓から見…

娘の望み

六歳の娘が、こづかいを少しずつ貯めて、買おうとした、たった一つの願い。妻を亡くし印刷工場で残業に追われる父と娘の絆を描いた泣ける話です。本当に大切なものを置き去…