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峠の地蔵と金平糖の朝

霧の朝、峠の茶屋へ金平糖を提げて上ってくるおばあさん。母を見送ったばかりの娘は、湯を沸かして待つうちに、ハルさんが五十年欠かさず通った峠の地蔵の理由を知ります。…

母がボタンを付ける理由

母が倒れて、私は商店街の小さなクリーニング店に立った。カウンターの隅の青い缶には、色も形もばらばらのボタンが何百個。常連客の一言で、私はその缶の正体を知る。見送…

母の代筆 二十九通

介護福祉士の主任として、よその家のお母ちゃんばかり何百人と看取ってきた私が、亡き母の鏡台で見つけた桐の文箱と二十九通の便箋。それはすべて、面会に来られない娘を庇…

水曜の朝の青い弁当箱

転校してきた花ちゃんが「お家に弁当がなかった」と言った日から、私は毎朝もう一仕切り多く詰めるようになりました。十年使っている青い弁当箱と、盛岡の実家の米びつに入…

片道三時間の嘘

三年間帰らなかった実家。電話口の「大丈夫」を信じたふりをしていた俺と、膝の痛みを隠していた母。軒先の干し花が教えてくれた、不器用な親子の本当の距離の話。…

母が誰かに預けていた一杯

墨田の路地を配達して七年、実家のある二丁目だけを避けて走ってきました。三丁目の田中さんが毎回出してくれる縁の欠けた薄緑の湯呑みと、押し入れの奥から出てきた一枚の…

麦茶の氷が鳴らなくなった夏

母は毎年、梅雨が明けると麦茶を製氷皿で凍らせていた。薄まらんように、と。脳の病で手が震えるようになっても、その習慣だけはやめなかった。私はある朝、その製氷皿を落…