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ガイドブックの赤鉛筆の線

東京に来ないかと誘うたび、母は人ごみが苦手やからと断った。その母の鏡台の引き出しから出てきた十二年前のガイドブックには、浅草にも焼肉屋にも赤鉛筆の線が引いてあり…

母が折ったページの角

体育のあとの教室で、机の上に切り裂かれた文庫本が置かれていました。いじめのことを、私は母に言えませんでした。友達のいない私に、母が月に一冊だけ本を買ってくれる人…

鳴らないままだったポケベル

諫早から松戸まで訪ねてきた母は、三日のあいだ一度も私のポケベルを鳴らしませんでした。使い方を知らないのだと、私は十五年ものあいだ思い込んでいたのです。冷蔵庫に残…

天国へ持って行きたい記憶

タオル工場で三十年、白い生地の傷を探し続けた母。傷を見つけるたびに結んでいた赤い一本の糸には、娘が二十四年ものあいだ気づかなかった意味がありました。母がためらわ…