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杜氏の櫂と白いままの帳面

昭和二十二年の秋、台風で汽車が止まり、山あいの酒蔵に二十数人が流れ着いた。米は尽きた。義父は翌年の仕込みのために三年かけて隠した一俵を釜に空け、酒造りの櫂で粥を…

義父が黙って巻いた時計

駅前の小さな時計店を継いだ婿の俺と、一度も直し方を教えてくれない不器用な義父。国家試験の合格を病室から不器用に祝う電話と、義父が四十年止めたままの形見の振り子時…

番台の親父と椿油の少年

昭和の城下町の銭湯を舞台にした泣ける話。番台を継いだ俺が、だらしないと決めつけた路地裏の少年。先代が遺した帳面には、母を見送り独りで長湯をする子の姿が記されてい…

親方の革砥を継いだ夏

昭和の終わり、北関東の城下町で三代続いた床屋を継いだ続かない俺。大叔父である先代から受け継いだ親方の革砥と、三十年分の常連カルテだけを頼りに刃を握る。嵐の朝、シ…

妻が拾った4380の音

新聞配達25年、誰にも見られない仕事だと思っていた。亡き妻が毎朝海岸で原付の音を聴き、一日一個の貝殻を拾い続けていたことを、漬物樽の中に残された四千の貝殻と犬へ…

父が頭を下げた人

父が急逝し、小豆島の小さな醤油蔵を継いだ俺の前に、四十年勤めた女性が辞表を出した。父と彼女が交わした四十年前の約束を辿った時、机の底から出てきた一冊のノートが胸…

俺が作った足で歩いてくれ

飛騨高山に赴任した義肢装具士の洋介は、担当患者の中に幼馴染の春子を見つけた。中学時代に傷つけた言葉をずっと謝れなかった男が、技術という誠意で届けた泣ける話。…

木曜日の油絵

廃業の危機に立つ銭湯の三代目が、無口な常連老人の死後に知った秘密。五十四年間、壁に飾られた油絵は誰が描いたのか。泣ける話・感動する話として多くの人の心に残る短編…