カテゴリー: 父

父親の話は、いつも不器用さの中に愛情があります。一緒に過ごした時間、言えなかった「ありがとう」、父になって初めてわかったこと——お父さんにまつわる泣ける実話風短編を集めました。

金ピカの時計

大学が決まり、一人暮らしを始める前日の日の事。 親父が時計をくれた。 金ピカの趣味の悪そうな時計だった。 「金に困ったら質に入れろ。多少、金にはなるだろうから」…

例え火の中でも

私の両親は小さな喫茶店を営んでいます。 私はそこの一人娘で、父は中卒で学歴はありませんが、とても真面目な人でした。 バブルが弾けて景気が悪化して来た頃、父は仕事…

ワイン好きの父

いまいち仲が良くなかった父が、入院する前夜にワインを取り出し、 「まあいつまで入院するか分からないけど、一応、別れの杯だ」 なんて冗談めかして言ったんだ。 こん…

親父の弁当を捨てた

小学1年生の秋に、母親が男を作って家を出て行き、俺は親父の飯で育てられた。 当時は親父の下手な料理が嫌で堪らず、また母親が突然居なくなった寂しさも相まって、俺は…

不器用な親父

背中を向けたまま何も言わない父でした。合格の日に病室から掛かってきた一本の電話と、物置のブルーシートの下で五年ものあいだ鳴りつづけていた小さな音の正体。浜松のピ…

知ってるよ

結婚の報告に帰省した晩、父から血の繋がりがないと打ち明けられました。知っているよ、と答えた息子。けれど三十年分の運行日誌の余白には、三歳の私が乗った日のことだけ…

手渡しのブーケ

「式には出ん」と言い続けた父は、娘の結婚式で着る服がわからないと言いました。宍道湖のシジミ漁師の家の鴨居に十九年掛かったままの礼服と、切られなかった仕立て札。ブ…

父が居たら

父の顔を知らずに育った私は、母がなぜ父を語ろうとしないのかを、長いあいだ誤解していました。りんご畑の町の墓の前で知った、母の沈黙の奥に隠された涙。亡き父と、今を…