カテゴリー: 父

父親の話は、いつも不器用さの中に愛情があります。一緒に過ごした時間、言えなかった「ありがとう」、父になって初めてわかったこと——お父さんにまつわる泣ける実話風短編を集めました。

父が居たら

父の顔を知らずに育った私は、母がなぜ父を語ろうとしないのかを、長いあいだ誤解していました。りんご畑の町の墓の前で知った、母の沈黙の奥に隠された涙。亡き父と、今を…

親父からの感謝の言葉

親父は、競艇と酒に明け暮れる暴君だった。家を出て疎遠になった俺のもとへ届いた、入院の報せ。湖畔の宿で過ごした二日間、車の中で初めて聞いた「ありがとう」が、最後の…

親父からのタスキ

泣ける話。中国山地の製材の町で長距離を愛した無口な父と、その期待を重荷に感じて走ることをやめた息子。すれ違いの果てに訪れた病床で、父が震える手で握らせた色褪せた…

父からの保護メール

声を荒らげることも、褒めることもなかった父が遺したのは、句読点さえない素っ気ないメールばかりでした。けれど一通だけ保護されていたメールには、面と向かっては決して…

父への反抗期

反抗期に、男手ひとつで育ててくれた父へ、ひどい言葉ばかりぶつけていました。数日遅れの誕生日ケーキと、まだ大切に使われていた手縫いの定期入れが教えてくれた、父の深…

父の名字

血のつながらない父を、私はずっと父だと思えませんでした。無口で不器用なその人が、菓子の缶にひそかに隠していたもの。遺された手帳のたった一行が、すれ違い続けた親子…

父が渡した十二年分の通帳

富山・高岡の銅器着色師だった父は、給料日の晩だけ湯呑みに酒を注ぎ、それを飲まずに置く人でした。結婚の報告に帰った日、ぶっきらぼうに差し出された通帳の入金欄は、十…

藍に染まった手

初めての給料で両親を食事に招いた、新米保育士の私。藍染職人の父は終始不機嫌で、二十年の苦労は晩飯一回で帳消しにはならないと言い放ちました。盃を支える青く染まった…

父の柄杓に残る十八の刻み

半年家を空ける岩手の南部杜氏の父と、そのたびに父の顔を忘れてしまう娘の泣ける話です。蔵へ持って出た柄杓の柄に刻まれた十八の刻みと、いちばん上の一本だけがなぜ深い…