カテゴリー: 父

父親の話は、いつも不器用さの中に愛情があります。一緒に過ごした時間、言えなかった「ありがとう」、父になって初めてわかったこと——お父さんにまつわる泣ける実話風短編を集めました。

親父の弁当を捨てた

小学1年生の秋に、母親が男を作って家を出て行き、俺は親父の飯で育てられた。 当時は親父の下手な料理が嫌で堪らず、また母親が突然居なくなった寂しさも相まって、俺は…

不器用な親父

背中を向けたまま何も言わない父でした。合格の日に病室から掛かってきた一本の電話と、物置のブルーシートの下で五年ものあいだ鳴りつづけていた小さな音の正体。浜松のピ…

手渡しのブーケ

「式には出ん」と言い続けた父は、娘の結婚式で着る服がわからないと言いました。宍道湖のシジミ漁師の家の鴨居に十九年掛かったままの礼服と、切られなかった仕立て札。ブ…

保護されたメールの一行

父の四十九日が過ぎた頃、母が簞笥の奥から古いガラケーを出してきた。受信一覧のいちばん下に、保護されたメールが一通だけ残っていた。九年前の三月十日、送信時刻は朝の…

父への反抗期

反抗期に、男手ひとつで育ててくれた父へ、ひどい言葉ばかりぶつけていました。数日遅れの誕生日ケーキと、まだ大切に使われていた手縫いの定期入れが教えてくれた、父の深…

父の名字

血のつながらない父を、私はずっと父だと思えませんでした。無口で不器用なその人が、菓子の缶にひそかに隠していたもの。遺された手帳のたった一行が、すれ違い続けた親子…