カテゴリー: 家族

家族のことを書いた話は、どれも胸に刺さります。当たり前すぎて気づかなかった愛情、不器用すぎて伝わらなかった気持ち、もう会えない人のことを思い出す瞬間。父、母、子供、祖父母——家族にまつわる感動する話をお届けします。

割れ寒天と四十年の嘘

寒天づくりの町に嫁いだ私は、四十年ものあいだ夫に小さな嘘をついていました。夫が毎冬とっておいた割れ寒天の行き先を、廃業を決めた最後の冬に、思いがけない訪問者から…

父が捨てなかった種袋

父の種袋には、売れ残りの古い種が入っているのだと思っていました。無口な父を見送り、二十四で小さな種苗店を継いだ春、私は触るなと言われた一番上の棚に手を伸ばします…

雪の峠で握られた手

昭和四十四年の豪雪の峠。乗合バスが横転し、七歳の姪は座席の下に閉じ込められた。半狂乱の私を救い出したのは、黄色い合羽の若い除雪作業員だった。背中を裂かれながら笑…

灯台守の爺と孫の小舟

昭和の岬に立つ灯台守の爺が、亡き娘の忘れ形見の孫を、しょっぱい味噌汁と誕生日ごとに彫った木彫りの小舟で、四十年かけて育て上げた。孫を初めての長い航海へ送り出す朝…

義父が黙って巻いた時計

駅前の小さな時計店を継いだ婿の俺と、一度も直し方を教えてくれない不器用な義父。国家試験の合格を病室から不器用に祝う電話と、義父が四十年止めたままの形見の振り子時…

血の繋がらない娘と楓

城下町の若い庭師が、亡き親方の忘れ形見である血の繋がらない娘を、ひとりで育てた三十数年の物語。世間の疑いの目に耐え抜いた不器用な父娘の絆は、娘が嫁ぐ日の一通の手…