母のガイドブック
東京で単身赴任をしていた時、連休になるといつも嫁が来て、家事などをしてくれていた。 母にも、偶には東京に来いよと言っていたのだけど、人混みが苦手だと言い、決して…
胸が締め付けられるような、あの感覚。泣けるほど悲しいわけではないのに、なぜか心のどこかに引っかかって残る話があります。後悔、別れ、言えなかった言葉。切なさの中にこそ、人が生きる美しさがある——そんな短編をまとめました。
東京で単身赴任をしていた時、連休になるといつも嫁が来て、家事などをしてくれていた。 母にも、偶には東京に来いよと言っていたのだけど、人混みが苦手だと言い、決して…
俺の母親は俺が12歳の時に死んだ。 ただの風邪で入院してから一週間後に、死んだ。 親父は俺の20歳の誕生日の一ヶ月後に死んだ。 俺の20歳の誕生日に、入院中の親…
私は昨日、小学4年生の子から手紙で相談を受けました。 『僕のお母さんに元気になって欲しくて、プレゼントをあげたいんだけど、僕のお小遣いは329円しかありません。…
俺が中学2年生の時だった。 幼馴染で結構前から恋心も抱いていた、Kという女子が居た。 でもKは、俺の数倍格好良い男子と付き合っていた。俺が敵う相手ではなかった。…
自分は父の顔を知らない。 自分が2歳の頃、交通事故で死んだそうだ。 母に、 「お父さんの名前、なんて―の?」 「お父さんの写真、見して!」 「お父さん、メガネか…
俺の親父は消防士だった。 いつ何があってもおかしくない仕事だから、よく母に 「俺に何かあっても、お前らが苦労しないようにはしてる」 と言っていたのを憶えている。…
3歳ぐらいの時から毎日のように遊んでくれた、一個上のお兄ちゃんが居た。 成績優秀でスポーツ万能。しかも超優しい。 一人っ子の俺にとっては、本当にお兄ちゃんみたい…
まだ一年程前の事です。 彼女がこの世を去りました。病死です。 その彼女と出会ったのは7年前でした。彼女はその頃、大学1年生でした。 彼女には持病があり、 「あと…
九歳で母を亡くし荒れていた私が、父のタンスの奥に見つけたのは「二十歳のあなたへ」と書かれた一本のビデオテープでした。病室の母が遺した十五分の言葉が人生を変えてい…
心肺停止で運ばれた八十八歳の夫に、八十四歳の妻が静かに願い出たのは、自らの手で行う心臓マッサージでした。雪の夜の救急外来で研修医が見届けた夫婦の最期の時間を描く…
苦手だった上司の部長は、私のたった一晩の失敗の責めを、何ひとつ言わずにたった一人で背負い、静かに会社を去っていきました。開いた薄荷の飴缶に添えられた一粒のメモが…
坂の上でいつも私を待っていてくれた、雑種の犬コロ。捨て犬だった子犬との出会いから、大病の看病、台風の日の待ち合わせ、そして十八歳を目前に旅立った最期まで、十八年…
親父は、競艇と酒に明け暮れる暴君だった。家を出て疎遠になった俺のもとへ届いた、入院の報せ。湖畔の宿で過ごした二日間、車の中で初めて聞いた「ありがとう」が、最後の…
夫は、息子の産声を聞けないまま、静かに逝きました。一歳の誕生日に郵便受けへ届いた、二通の手紙。雪深い和紙の里で紙を漉く妻のもとへ、亡き夫が遺した不器用な言葉が、…
街はずれの古本屋で出会った私と、閉店間際に通っていた彼女の物語です。子どもを産めないと知り、自分から別れを告げた彼女。それでも手を離さなかった私。立場が逆転した…