母のガイドブック

公開日: ちょっと切ない話 | 家族 |

浅草の三社祭の提灯(フリー写真)

東京で単身赴任をしていた時、連休になるといつも嫁が来て、家事などをしてくれていた。

母にも、偶には東京に来いよと言っていたのだけど、人混みが苦手だと言い、決して来なかった。

そんな母が脳梗塞で突然死んじゃって、呆然としたまま遺品を整理していたら、東京のガイドブックが出てきた。

皇居や浅草などのベタなところに沢山、赤鉛筆で線が引いてあって、何度も読み返したらしくボロボロになっていた。

親父に聞いたら、行きたかったんだけど嫁の方が良いだろうと我慢していたのだそうだ。

自分は肉が嫌いな癖に、俺の好きそうな焼肉屋などにも一杯線が引いてあって、俺と一緒に回るのを夢見ていたらしい。

俺はお義理で誘っただけなんだけど、誘われた後は何回も何回も息子が来いと言ってくれたと喜んでいたらしい。

一緒に行きたかった場所には、俺の名前が書いてあって、それがたくさんたくさん書いてあって…。

死に顔を見た時よりも、葬式の時よりもすっごく泣いた。

田舎に戻った今でも、生きている間に呼ばなかったことを後悔している。

母(フリー写真)

母のビデオテープ

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学校(フリー写真)

学生時代の思い出

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野良猫(フリー写真)

猫の痰助

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レストラン(フリー写真)

父の気持ち

某信用金庫に勤める二十歳の女性が、初月給を親のために使って喜んでもらおうと、両親をレストランに招待しました。 お母さんは前日から美容院へセットに行ったりして大喜び。 ところ…

夕陽(フリー写真)

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青い花(フリー写真)

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浜辺で子供を抱き上げる父親(フリー写真)

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指切り(フリー写真)

幸せをありがとう

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蛍(フリー写真)

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手を繋ぐ親子(フリー写真)

会いたい気持ち

私が4歳の時、父と母は離婚した。 当時は父方の祖父母と同居していたため、父が私を引き取った。 母は出て行く日に私を実家に連れて行った。 家具や荷物がいっぱい置いてあ…