燃える紙にだけ私の名があった
七つで両親に置いていかれた私を、血のつながらない花火師が引き取った泣ける話。五十年ただの一度も名前を呼ばれず、玉名帳にも名簿にも私の名はなかった。その理由は、空…
七つで両親に置いていかれた私を、血のつながらない花火師が引き取った泣ける話。五十年ただの一度も名前を呼ばれず、玉名帳にも名簿にも私の名はなかった。その理由は、空…
父の種袋には、売れ残りの古い種が入っているのだと思っていました。無口な父を見送り、二十四で小さな種苗店を継いだ春、私は触るなと言われた一番上の棚に手を伸ばします…
父が遺した十七の巣箱のうち、一箱だけがいつも空だった。三年ぶりに雪を掘り返した私を待っていたのは、いつのまにか増えた三つの箱と、十六の夏にこの高原へ来た青年の話…
駅前の小さな時計店を継いだ婿の俺と、一度も直し方を教えてくれない不器用な義父。国家試験の合格を病室から不器用に祝う電話と、義父が四十年止めたままの形見の振り子時…
昭和の信州の宿場町を舞台にした泣ける話。峠の鍛冶屋として生きる私は、生き別れた父の顔を知らずに育った。ある雪の夜、村に担ぎ込まれた行き倒れの老人の巾着には、幼い…
平成元年の秋、十八で家業の大工を継いだ私が拾った仔犬シゲは、父の道具袋の上で十七年を静かに眠り続けた。私の出産入院中に旅立った愛犬の傍らで見つけた、不器用な父が…
不器用な父との別れと、年月を超えて届く一通の絵葉書を描く感動の短編。新潟の雪深い古書店『松露堂』を舞台に、店主と詩集を借りる中年男性が紡ぐ、家族の和解の物語。届…
単身赴任の父が三十年かけて作った帆船模型。沖縄の離島で父と再会した息子が、船底に刻まれた二十数年分の「ただいま」を発見する泣ける話。不器用な父の愛が、静かに胸に…
納屋の棚の奥から見つかった錆びた缶。中に入っていたのは、無口な父が一人でこっそり録音していたカセットテープだった——泣ける話・感動の短編…
二年ぶりに帰省した私は、土間で父が黙々と革靴を磨いているのを見た。それは二年前に私が置いていった靴だった。父がずっと磨き続けていたと知ったとき、胸の奥が静かに震…
高校一年の夏に父のがんを知り、八戸の市場に立ち続ける背中を見ていました。父の帳面は一の位だけが鉛筆です。その数字の意味と、最後の一年に父が市場で呼ばれていた名前…
長崎・波佐見の窯場の町で、小学四年だった私は店先のブリキの消防車を盗みました。その年の誕生日、父が押入れの奥の紙袋から出したのは、まったく同じ品でした。底に並ん…
母が入院していた小学四年の春、焼津のかつお節工場で焙乾をしていた父が、遠足の前夜に私のリュックを詰め直しました。店へ行ったのではなく三軒の家の戸を叩いていたと知…
大分・日田で下駄の台を削っていた父は、三つになる娘が掛け紙で折った空っぽの箱を、二十八年ものあいだずっと枕元に置き続けています。「キッスをいっぱい入れたの」と言…
背中を向けたまま何も言わない父でした。合格の日に病室から掛かってきた一本の電話と、物置のブルーシートの下で五年ものあいだ鳴りつづけていた小さな音の正体。浜松のピ…