タグ: 後悔

九官鳥のおかえり

九官鳥のおかえりという二言だけが、四十年たった今も耳の奥に残っている。北の山あいの谷へ単身赴任した若き日、凍える独りの夜を支えてくれた一羽の鳥に、私はある約束を…

鳴らさなかった風鈴

いつか島へ行こう——七海と交わした親友との約束を、私は仕事を口実に先延ばしにし続けた。彼女がいなくなった夏、鳴らさないまま仕舞っていた水色の風鈴を抱え、私は初め…

父の独楽

父の独楽を、私は四十年ものあいだ箱の奥に仕舞っていた。戦時中、時計の修理に追われ、幼い息子と遊んでやれなかった父。手すきになったらいっしょに回そう、という約束は…

雪の日に開いた兄の手帳

北海道の漁村で写真を撮り続けた兄が旅立った。荷物を引き取りに行った二月の部屋で、押し入れの奥から黒い表紙の兄の手帳が出てきた。毎年三月十四日にだけ、撮影記録のな…

最後のお弁当

手が震える母がつくる茶色い弁当を、毎日バケツに空けていた高校二年の秋。海老を入れた朝の最後のお弁当に私が返した言葉と、母の手帳に残された二行が、二十年たった今も…

途切れた言葉に既読がつかない夜

喧嘩をした土曜の朝のあと、菜月からの返信はぷつりと途切れた。鳴った着信と、遅れて届いた「ごめんね」。三年後の命日、私が初めて送った一通が、途切れた言葉の続きを探…