途切れた言葉

公開日: 恋愛 | 悲しい話

カップル

あの日、些細なことから彼女と言い争いをしていた。

心の中では、今にも許し合えるような感じがしていたが、彼女は険悪な雰囲気のまま、仕事へと向かってしまった。

その後、私は友人たちと過ごし、何気なく彼女への不満を口にしていた。

夕暮れ近く、彼女の仕事が終わる頃を見計らって、彼女にメッセージを送った。

その内容は、私たちの関係に大きな影響を及ぼすものではなかったが、言葉のやり取りは続いた。

だが突然、彼女からの返信が途絶えた。

不安に思いつつも、口論中であったため、何も考えずに時間を過ごしていた。

約一時間後、彼女の番号からの着信が私の携帯に表示された。

期待と不安を抱えながら電話を取ると、思いもよらぬ女性の怒りの声が響いた。

「あなたが殺したのよ!」

その後、その声は静かな男性の声へと代わった。

彼女は事故を起こし、命を失ってしまったとの知らせだった。

その瞬間、私の心は真っ白になり、信じられない現実を突きつけられた。

電話を閉じた後、一通のメッセージが届いた。

それは、彼女の最後のメッセージであり、

「ごめんね」

という彼女の思いやりが詰まった言葉だった。

私は彼女の家族から遠ざけられ、彼女と最後の別れを交わすこともできなかった。

未だに、彼女に謝罪の言葉を伝えられていない。

彼女への後悔と、彼女と過ごす未来を失ったことへの痛みが、胸の奥に刻まれている。

関連記事

ウィスキー(フリー写真)

悲しい時は泣くんだよ

家内を亡くしました。 お腹に第二子を宿した彼女が乗ったタクシーは、病院へ向かう途中、居眠り運転のトラックと激突。即死のようでした。 警察から連絡が来た時は、酷い冗談だと思い…

終電(フリー写真)

精一杯の強がり

彼とは中学校からの付き合いでした。 中学校の頃から素直で、趣味などでも一つのことをとことん追求するような奴でした。 中学、高校、大学と一緒の学校に通い、親友と呼べる唯一の友…

浜辺で手を繋ぐカップル(フリー写真)

彼女の面影

彼女が痴呆になりました。 以前から物忘れが激しかったが、ある日の夜中に突然、昼ご飯と言って料理を始めた。 更に、私は貴方の妹なのと言ったりするので、これは変だと思い病院へ行…

月(フリー写真)

月に願いを

俺は今までに三度神頼みをしたことがあった。 一度目は俺が七歳で両親が離婚し、父方の祖父母に預けられていた時。 祖父母はとても厳しく、おまけに 「お前なんて生まれて来な…

恋人同士(フリー写真)

がんばろうや

親父がサラ金で借金を作って逃げた。 それで、とうの昔に別居していた母さんと住む事になった。 友達にも母さんにも明るく振る舞っているけど、正直参っている。 「あんたは強…

手を繋いで歩く夫婦(フリー写真)

たった一つの記憶

私の夫は、結婚する前に脳の病気で倒れてしまい、死の淵を彷徨いました。 私がそれを知ったのは、倒れてから5日も経ってからでした。 夫の家族が病院に駆け付け、携帯電話を見て私の…

新郎新婦(フリー写真)

結婚式場の小さな奇跡

栃木県那須地域(大田原市)に『おもてなし』の心でオンリーワン人情経営の結婚式場があります。 建物は地域の建築賞を受賞(マロニエ建築デザイン賞)する程の業界最先端の建物、内容、設…

桜(フリー写真)

戦友を弔うために

インドで傭兵としてパキスタン軍と対峙していた時、遠くから歌が聞こえてきた。 知らない言葉の歌だったが、味方のものではないことは確かなので、銃をそちらに向けた。すると上官に殴り飛ば…

マグカップ(フリー写真)

友人の棺

友人が亡くなった。 入院の話は聞いていたが、会えばいつも元気一杯だったので見舞いは控えていた。 棺に眠る友人を見ても、闘病で小さくなった亡骸に実感が湧かなかった。 …

夕日と花を掴む手(フリー写真)

泣くな

ある日、教室へ行くと座席表が書いてあった。 私の席は廊下側の前から二番目。彼は窓側の一番後ろの席。離れてしまった。 でも同じクラスで本当に良かった。 ※ クラスに馴染ん…