途切れた言葉

公開日: 恋愛 | 悲しい話

カップル

あの日、些細なことから彼女と言い争いをしていた。

心の中では、今にも許し合えるような感じがしていたが、彼女は険悪な雰囲気のまま、仕事へと向かってしまった。

その後、私は友人たちと過ごし、何気なく彼女への不満を口にしていた。

夕暮れ近く、彼女の仕事が終わる頃を見計らって、彼女にメッセージを送った。

その内容は、私たちの関係に大きな影響を及ぼすものではなかったが、言葉のやり取りは続いた。

だが突然、彼女からの返信が途絶えた。

不安に思いつつも、口論中であったため、何も考えずに時間を過ごしていた。

約一時間後、彼女の番号からの着信が私の携帯に表示された。

期待と不安を抱えながら電話を取ると、思いもよらぬ女性の怒りの声が響いた。

「あなたが殺したのよ!」

その後、その声は静かな男性の声へと代わった。

彼女は事故を起こし、命を失ってしまったとの知らせだった。

その瞬間、私の心は真っ白になり、信じられない現実を突きつけられた。

電話を閉じた後、一通のメッセージが届いた。

それは、彼女の最後のメッセージであり、

「ごめんね」

という彼女の思いやりが詰まった言葉だった。

私は彼女の家族から遠ざけられ、彼女と最後の別れを交わすこともできなかった。

未だに、彼女に謝罪の言葉を伝えられていない。

彼女への後悔と、彼女と過ごす未来を失ったことへの痛みが、胸の奥に刻まれている。

関連記事

コスモスの花(フリー写真)

余命半年の彼女

今日、彼女と別れた。 原因は彼女の病気、癌だった。 最初に聞いた時、冗談だと思った。 つい昨日まで普通に遊んで、喋って、ご飯を食べて、笑っていたのに。 俺は、 …

新郎新婦(フリー写真)

結婚式場の小さな奇跡

栃木県那須地域(大田原市)に『おもてなし』の心でオンリーワン人情経営の結婚式場があります。 建物は地域の建築賞を受賞(マロニエ建築デザイン賞)する程の業界最先端の建物、内容、設…

雨

雨の中の青年

20年前、私が団地に住んでいた頃のことです。ある晩、会社から帰宅すると、団地前の公園で一人の男の子が、雨の中傘もささず、向かいの団地をじっと見つめていました。その様子は不気味で、見て…

親子の後ろ姿(フリー写真)

育ての親

私には、お母さんが二人居た。 一人は、私に生きるチャンスを与えてくれた。 もう一人は……。 ※ 私の17歳の誕生日に、母が継母であることを聞かされた。 私を生んで…

ダイヤの結婚指輪(フリー写真)

年下の彼氏

年下の彼氏が居た。当時の私は30歳で、彼は22歳だった。 大学生だった彼は、社会人の私に頭が上がらなかったらしく、付き合い始めて3年経っていたが将来の話なんて一つもしなかった。 …

教室(フリー写真)

虐め

友達が自殺した。 理由はよくある『虐め』。 俺は気付いていた。 友達が虐められてたことには気付いていた。 でも自分までそうなるのが嫌だったから、最後は他人の振り…

野球(フリー写真)

甲子園の約束

十年前、彼女が死んだ。 当時、俺達は高校3年生。同じ高校に通い、同じ部活だった。 野球部だった。 俺と彼女は近所に住む幼馴染で、俺は小さな頃から、野球が好きな両親に野…

女性(フリー写真)

見守ってる

昨日、恋人が死んだ。 病気で苦しんだ末、死んだ。 通夜が終わり、病院に置いて来た荷物を改めて取りに行ったら、その荷物の中に俺宛の手紙が入っていた。 そこには、 …

ビル

予期せぬ守り神

内定式で初めて彼女と出会った。彼女は私たちの同期だった。 彼女は聡明の代名詞のような人だった。学生時代の論文で賞を受けるほどの才女で、周囲からは期待の新星と見なされていた。 …

瓦礫

被災からの救済と感謝

被災した時、私は中学生でした。家は完全に崩壊しましたが、たまたま外に近い部屋で寝ていたため、腕を骨折するだけで済み、何とか自力で脱出できました。しかし、奥の部屋で寝ていた母と妹は助か…