岬の灯台と手のひらの声
昭和三十一年、離島の灯台守だった俺は、時化の海から耳の聞こえない娘・汐里を救い上げた。帳面と手話で言葉を交わすうち、島じゅうが手話を覚えていく。声にできない想い…
昭和三十一年、離島の灯台守だった俺は、時化の海から耳の聞こえない娘・汐里を救い上げた。帳面と手話で言葉を交わすうち、島じゅうが手話を覚えていく。声にできない想い…
硝子職人の私を唐突に振った幼馴染の凛子。半年後、妹からの電話で知った真実は、重い病でひとり身を引いた、彼女の優しい嘘だった。海色の浮き玉に祈りを込めて、彼女のも…
昭和の信州の宿場町を舞台にした泣ける話。峠の鍛冶屋として生きる私は、生き別れた父の顔を知らずに育った。ある雪の夜、村に担ぎ込まれた行き倒れの老人の巾着には、幼い…
嫁にもらってもらった負い目を抱えて、四十年。夫と二人、城下町の小さな和菓子屋を守ってきた。店を畳む日、桔梗の菓子木型の奥から出てきた一冊の帳面が、負い目だと思っ…
雪深い湯治場に冬だけ来ていた、足を患う蛍さん。退屈な谷の子供たちに、蛍さんはお手玉と歌を教えてくれた。四十年後、宿を畳む日に妹が届けた一冊の手帳が明かす、本当に…
心温まる感動の泣ける話。四国の和紙の町ででくのぼうと呼ばれた少年が、震える手で描いた一匹の金魚。旅の紙芝居屋は、その絵札を生涯いちばん上に置き続けた。四十年後の…
昭和の城下町で時計店を継いだ男と、北の港町へ移っていった人。季節の押し花を挟んだ文通は七年目の春に途絶え、誤解を抱えたまま二十数年が流れた。出されることのなかっ…
戦後すぐの山あいの貧しい村で病弱だった私の脇に、恩師の体温計を毎日挟みに来てくれた矢島先生。四十年後、記憶を失い私を忘れた先生に、私は同じ体温計で五分の検温を続…
三重県四日市市の駄菓子屋『八重屋』を四十年営んできた私が、店を畳む夕方に出会ったのは、四十年前に消えた幼馴染の拓ちゃんだった。ラムネ瓶のビー玉に込めた五歳の約束…
群馬から東京に出た私が、若年性パーキンソン病になった兄から呼ばれて蔵を訪ねた。そこで見つけたのは、兄が何年もかけて描き続けた未完成の星座絵本『リョウカの星』だっ…
不器用な父との別れと、年月を超えて届く一通の絵葉書を描く感動の短編。新潟の雪深い古書店『松露堂』を舞台に、店主と詩集を借りる中年男性が紡ぐ、家族の和解の物語。届…
飛騨高山に赴任した義肢装具士の洋介は、担当患者の中に幼馴染の春子を見つけた。中学時代に傷つけた言葉をずっと謝れなかった男が、技術という誠意で届けた泣ける話。…
単身赴任の父が三十年かけて作った帆船模型。沖縄の離島で父と再会した息子が、船底に刻まれた二十数年分の「ただいま」を発見する泣ける話。不器用な父の愛が、静かに胸に…
昭和の吉野で豆腐屋の娘・はるこへ恋心を秘め続けた源一の物語。五十年後の静かな再会が心に染みる、泣ける話。感動の短編。…
十一年口をきかなかった兄の漁師小屋で、弟が見つけたのは三十年分の魚拓帳だった。空白のページに繰り返される『静夫、来ず』──たった四文字に込められた、不器用な兄の…