十一年目に外したしつけ糸
婚約者の長い療養で結婚式をあきらめた私と、注文の止まったウェディングドレスを十一年間しつけ糸のまま守り続けた仕立て屋の物語。袖口の白い糸に隠されていた約束と、病…
婚約者の長い療養で結婚式をあきらめた私と、注文の止まったウェディングドレスを十一年間しつけ糸のまま守り続けた仕立て屋の物語。袖口の白い糸に隠されていた約束と、病…
土曜の三時、最前列の右端にいつも同じ子が座っていた。照明が落ちた数秒だけ、その子は声を出せた。三十年後、閉館の決まったプラネタリウムに現れた整備士が、肘掛けに残…
夜の峠で車の救援をする私は、十一年前、恋人だった彼にひとつだけ頼まれた。峠の霧が晴れる瞬間を見てきてほしい、と。報告するたび彼が聞いたのは「何時何分?」だけだっ…
二十年前「あんたは向いとらん」と私を切り捨てた元上司が、山の集落で毎週わたしの魚を買い続けた。泣ける話の長編。捌かなくていいと言い続けた理由と、集落に人が並んで…
昭和三十一年、離島の灯台守だった俺は、時化の海から耳の聞こえない娘・汐里を救い上げた。帳面と手話で言葉を交わすうち、島じゅうが手話を覚えていく。声にできない想い…
硝子職人の私を唐突に振った幼馴染の凛子。半年後、妹からの電話で知った真実は、重い病でひとり身を引いた、彼女の優しい嘘だった。海色の浮き玉に祈りを込めて、彼女のも…
昭和の信州の宿場町を舞台にした泣ける話。峠の鍛冶屋として生きる私は、生き別れた父の顔を知らずに育った。ある雪の夜、村に担ぎ込まれた行き倒れの老人の巾着には、幼い…
嫁にもらってもらった負い目を抱えて、四十年。夫と二人、城下町の小さな和菓子屋を守ってきた。店を畳む日、桔梗の菓子木型の奥から出てきた一冊の帳面が、負い目だと思っ…
昭和の城下町で時計店を継いだ男と、北の港町へ移っていった人。季節の押し花を挟んだ文通は七年目の春に途絶え、誤解を抱えたまま二十数年が流れた。出されることのなかっ…
三重県四日市市の駄菓子屋『八重屋』を四十年営んできた私が、店を畳む夕方に出会ったのは、四十年前に消えた幼馴染の拓ちゃんだった。ラムネ瓶のビー玉に込めた五歳の約束…
群馬から東京に出た私が、若年性パーキンソン病になった兄から呼ばれて蔵を訪ねた。そこで見つけたのは、兄が何年もかけて描き続けた未完成の星座絵本『リョウカの星』だっ…
不器用な父との別れと、年月を超えて届く一通の絵葉書を描く感動の短編。新潟の雪深い古書店『松露堂』を舞台に、店主と詩集を借りる中年男性が紡ぐ、家族の和解の物語。届…
単身赴任の父が三十年かけて作った帆船模型。沖縄の離島で父と再会した息子が、船底に刻まれた二十数年分の「ただいま」を発見する泣ける話。不器用な父の愛が、静かに胸に…
昭和の吉野で豆腐屋の娘・はるこへ恋心を秘め続けた源一の物語。五十年後の静かな再会が心に染みる、泣ける話。感動の短編。…
十一年口をきかなかった兄の漁師小屋で、弟が見つけたのは三十年分の魚拓帳だった。空白のページに繰り返される『静夫、来ず』──たった四文字に込められた、不器用な兄の…