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九官鳥のおかえり

九官鳥のおかえりという二言だけが、四十年たった今も耳の奥に残っている。北の山あいの谷へ単身赴任した若き日、凍える独りの夜を支えてくれた一羽の鳥に、私はある約束を…

父が隠した首輪

犬との別れを、私は父のせいだと三十年恨み続けた。だが父を見送ったのち、引き出しから現れた白い犬の赤い首輪と古いバスの半券が、語られなかった真実を静かに告げる。毎…

妻が拾った4380の音

新聞配達25年、誰にも見られない仕事だと思っていた。亡き妻が毎朝海岸で原付の音を聴き、一日一個の貝殻を拾い続けていたことを、漬物樽の中に残された四千の貝殻と犬へ…

窯の前の命

師走の命日の朝、老陶芸家は窯の余熱の前で震える子猫を見つけた。亡き妻の形見の浅鉢に水を入れてやりながら、その名を「備前」と呼んだ。小さな命が運んできた、日常の温…

玄関で待っていた

定年になったら一緒にいてやる。そう思い続けた十五年間、猫のチビはずっと玄関で帰りを待っていた。でも、私が戻ったとき、チビはもうそこにいなかった。…

猫のゆめと過ごした日々

高校生の冬、私の電気毛布の上で産まれた猫のゆめ。出産予定日の十日前に入院したあの日、玄関で待つ猫だったゆめが最後に見せた姿を、娘が二歳になった今、ようやく書き残…

サチへの手紙と小屋の体操着

実家の庭に残る犬小屋を片付ける日、俺は十五年ぶりに扉を開けた。サチへの手紙のつもりで綴る、子犬の最初の晩、柱に結んだ紐、公園のベンチ、そして小屋の奥に残った体操…

父の護衛をしていた猫

朝四時から製麺所へ向かう父の先を歩いていた茶トラ猫のみぃ。父の護衛は、棺の小窓を一晩じゅう掘り続け、骨上げの日に忽然と姿を消した。四十九日の朝、玄関で鳴いていた…

白猫のみーちゃん

転校先の諏訪の寒天場で、亡くなった前の住人の白い猫と暮らした少女がいました。名前を呼んでも一度も返事をしなかった理由は、四十九日のあとに隣家の奥さんの一言で分か…

待っていてくれた猫

小学生の頃に飼っていた白猫は、私が家を空けた冬に用水路で亡くなりました。就職して二年目、泣きながら歩く夜道に現れた一匹の白い猫。越前の眼鏡の町を舞台に、なぜあの…