カテゴリー: 心温まる話

読んでいるうちに、胸がじわりと温かくなる話を集めました。日常の中に隠れた誰かの優しさ、見えないところで続けられた愛情、言葉にならなかった想い。泣けるというより、しみじみと何かが伝わってくる——そんな感動する話をお届けします。

遺失物の傘は木曜に減っていく

木曜になると、棚の遺失物の傘だけが数本消えていく。几帳面な駅員は、雨の改札の庇の下で元助役の老人を問いただした。盗みではなかった。けれど棚の奥の小さな青い傘だけ…

母の煮物が濃くなった春

母の煮物は、私が高校2年の春から急に濃くなった。しょっぱい、と何度も言った。母は笑うだけで、味つけを戻さない。22年後、手首を痛めた母の代わりに台所へ立った私は…