妹が遺した湯呑みと姪の涙
山あいの窯場で妹を静かに見送った陶芸家の私。強くあろうと涙をこらえ続ける私に、四歳の姪がかけたひと言が、凍りついた心を静かにほどいていく。妹を残した若い医者への…
山あいの窯場で妹を静かに見送った陶芸家の私。強くあろうと涙をこらえ続ける私に、四歳の姪がかけたひと言が、凍りついた心を静かにほどいていく。妹を残した若い医者への…
弟から掛かってきた、生まれて初めての電話。昭和三十年代の雪深い炭鉱町を舞台に、詫びてばかりの弟と約束を破った姉の最後の冬を描く泣ける話。弟の行李の底に眠っていた…
駅前の小さな時計店を継いだ婿の俺と、一度も直し方を教えてくれない不器用な義父。国家試験の合格を病室から不器用に祝う電話と、義父が四十年止めたままの形見の振り子時…
昭和の城下町の貸衣装店を舞台にした泣ける話。先に逝った父の黒紋付を、息子の祝言のために仕立て直してほしい——そう持ち込まれた一枚の紋付の裏地から、二十年眠ってい…
昭和の港町を舞台にした泣ける話。風鈴職人の私のもとへ、海から戻らぬ父のために、泣いてばかりの母を笑わせたいという男の子が訪れた。豆粒ほどの小さな風鈴に託した祈り…
城下町の若い庭師が、亡き親方の忘れ形見である血の繋がらない娘を、ひとりで育てた三十数年の物語。世間の疑いの目に耐え抜いた不器用な父娘の絆は、娘が嫁ぐ日の一通の手…
峠の茶屋をひとりで継いだ私が出会った、毎朝お地蔵さまへ通う小さなハルさん。色あせた巾着に詰めた金平糖に込められていたのは、七つで旅立った息子への、五十年分の『お…
硝子職人の私を唐突に振った幼馴染の凛子。半年後、妹からの電話で知った真実は、重い病でひとり身を引いた、彼女の優しい嘘だった。海色の浮き玉に祈りを込めて、彼女のも…
撮らせてくれない一枚の写真——昭和の雪国の城下町に生きる若い写真師と、三つ年上の仕立ての女の物語。胸の病を隠し、笑って嘘の別れを選んだ人が遺した黒い台紙と最後の…
紙芝居師の私が、祖母の形見の木箱から見つけたのは、端の焦げた朝顔の絵。その裏には、空襲で戻らなかった幼い弟の名前が、震える字で記されていた。祖母の紙芝居が六十年…
昭和の信州の宿場町を舞台にした泣ける話。峠の鍛冶屋として生きる私は、生き別れた父の顔を知らずに育った。ある雪の夜、村に担ぎ込まれた行き倒れの老人の巾着には、幼い…
昭和の瀬戸内の造船の町を舞台にした泣ける話。身寄りのない船大工の見習いだった私は、廻船問屋の一人娘・志津に恋をした。家格の壁と遠い療養先、月に一度届く文の終いに…
昭和の城下町の銭湯を舞台にした泣ける話。番台を継いだ俺が、だらしないと決めつけた路地裏の少年。先代が遺した帳面には、母を見送り独りで長湯をする子の姿が記されてい…
幼い日に両親と離れ、美濃の和傘の里で無口な祖父に引き取られた私。都会の子だった私は里に馴染めなかった。店を閉じる雨の日、蔵の奥から出てきた、あかね色の糸でかがっ…
嫁にもらってもらった負い目を抱えて、四十年。夫と二人、城下町の小さな和菓子屋を守ってきた。店を畳む日、桔梗の菓子木型の奥から出てきた一冊の帳面が、負い目だと思っ…