コロの思い出
うちにはコロという名前の雑種の犬が居ました。
白色と茶色の長い毛がふわふわしている犬でした。
私が学生の頃は学校から帰って来る時間になると毎日、通学路が見える場所に座り、遠くから歩いて来る私を待っていてくれる利口な犬でした。
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それから10年程経ち、家族は引っ越さなければならなくなりました。
それは庭の狭い小さな家でしたが、もちろんコロも一緒です。
しかし遊ぶ庭が無く、17才という年齢もあって、引っ越してから間も無くしてコロは足腰が弱り、歩けなくなってしまいました。
次第に目も白内障になり、耳も遠くなりました。
そして人間の認知症と同じでしょうか、朝晩の区別が付かず、夜中に大声で吠えるようになりました。
狭い住宅地では苦情が来た事も一度や二度ではありませんでした。
しかし外でしか生活した事のない犬を、狭い借家に上げる訳にも行かず、どうする事も出来ませんでした。
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それから半年後の寒い冬の日、コロはひっそりと息を引き取りました。18才の誕生日目前でした。
色々な気持ちが入り交じって、涙が止まりませんでした。
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翌日焼き場へ行きお焼香をし、最後のお別れをして火葬の厚いドアが閉められた時、目に浮かんだのは、帰りを待っていてくれたあの姿。
待ち遠しくソワソワし、一点を見つめていたあの姿。そして急ぎ足で帰った通学路。
コロ、心からありがとう。安らかに。