会いに来てくれた猫

公開日: ペット | 心温まる話 |

猫(フリー写真)

五年前に飼っていた茶トラ猫。

当時、姉が家出同然で出て行ってしまい、家の雰囲気が暗かったのを憶えています。

そんなこともあり、私は家では出来るだけ明るく振る舞っていましたが、本当は家族に仕事や恋愛の悩みを相談したかったんです。

でもそういう雰囲気ではなかったので、夜に眠る時や誰も居ない時に、その猫によく相談しながら泣いていました。

相談と言っても、猫だから黙って私を見ているだけだったんですけどね。

その猫は私のお布団の中が好きで、毎日夜になるとニョロニョロと入って来ては、背中と腰の中間くらいのところにずっしりと寄り掛かって眠っていました。

時が経ち、その子が病気で亡くなって裏庭に埋める時、手紙を書いて一緒に埋めました。

「色々お話を聞いてくれてありがとう。オバケでも良いから時々会いに来てね」

と書きました。

つい二、三日前のことです。

相変わらずの人間関係からのストレスで貧血状態になり、横になっていました。

うとうとしていると、猫がニョロニョロとお布団の中に入って来る気配。

今は別の猫を飼っているので、そいつだと思って気にしていなかったのですが、ちょうど背中と腰の中間辺りに寄り掛かったのです。

ほんのり温かくて、ズシッと重い感じ…。ん? この重みは…!!

「…心配して来てくれたの!?」

とお布団の中を覗くとスーッと重みが消え、誰も居ませんでした。

全然怖くなくて、寧ろ亡くなった後も心配を掛けている自分が情けなくなり、しくしく泣いてしまいました。

そのまま泣きながら眠りに就くと、夢にご飯を食べている茶トラ猫が出て来ました。

目が覚めてからお線香を上げ、猫の餌をお供えしました。

関連記事

サイコロ

おばあちゃんの願い

子どもの頃、家庭の事情でおばあちゃんの家に預けられた俺。見知らぬ土地に来て間もないこともあり、友達はおらず、孤独を感じていた。 その寂しさを紛らわせるため、ノートに自分で考えた…

牢屋

想像の中の少女と共に

大戦中、ドイツ軍の捕虜収容所に居たフランス兵たちのグループが、捕虜生活の苛立ちから来る仲間内の争いや悲嘆を紛らわすために、共同で「脳内共同ガールフレンド」を創り出した話。 彼ら…

乾杯(フリー写真)

俺の夢

僕達兄弟には元々親が居らず、養護施設で育ちました。 3つ上の兄は、中学を出るとすぐに鳶の住み込みで見習いになり、その給料は全て貯金していました。 そのお金で僕は私立の高校を…

インドネシアの朝焼け(フリー写真)

インドネシア建国の神話

1602年、オランダはジャワ島に東インド会社を設立し、植民地経営を始めました。 首都のジャヤカルタはバタヴィアに改称され、以降350年間に渡って、オランダは東ティモール以外の領…

カップル

傷跡を越えて

私は生まれながらに足に大きな痣があり、それが自分自身でもとても嫌いでした。その上、小学生の時に不注意で熱湯をひっくり返し、両足に深刻な火傷を負いました。痕は治療を重ねましたが、完全に…

親子

母の願い、父の誓い

俺には母親がいない。 俺を産んですぐ、事故で死んでしまったらしい。 産まれた時から耳が聞こえなかった俺は、物心ついた時にはもう、簡単な手話を使っていた。 耳が聞こえ…

母(フリー写真)

母のビデオテープ

俺は小さい頃に母親を亡くしている。 それで中学生の頃は恥ずかしいほどグレた。 親父の留守中、家に金が無いかタンスの中を探していると、一本のビデオテープがあった。 俺は…

卵焼き(フリー写真)

とうちゃんの卵焼き

この前、息子の通う保育園で遠足があった。 弁当持参だったのだが、嫁が出産のため入院していたため、俺が作ることになった。 飯を炊くくらいしかしたことがないのに、弁当なんて無理…

クリスマスツリー

サンタさんへ ― 6歳の願いごと

クリスマスの数日前、6歳の娘が、欲しいものを手紙に書いて窓際に置いていました。 ピンクのキティちゃんの便箋が、丁寧に折りたたまれていて。 「何が欲しいのかなぁ」と、私と夫…

親子

「おかえり」と言ってくれる人

私は、父が大好きだ。 いつも優しくて、笑顔を絶やさない人。 私がいじめられていたときも、誰よりも真剣に話を聞いてくれて、守ってくれた。 ※ 父の職場は遠くて、…