痛みを知る者

公開日: 仕事 | 心温まる話

バー(フリー写真)

自分でも理由は判らないが、気が付けば仕事のやる気を失くしていた。

会社を欠勤し、それが数日続いたある日の夜、強面の上司が自宅に来た。

最後通告かなと思いながら、上司の行きつけらしいショットバーへ連れて行かれた。

案の定、会社に出て来ない俺を気に掛けていた様子で、俺は何故かやる気が出ない事を正直に話した。

辞めようか悩んでいるとも。

強面の上司から意外な言葉が返って来た。

「人間は自分で思ってるよりもギリギリのバランスで生きてるんだよ。

走れば走る程、それだけバランスを崩し易くなる。

周りが見えなくなる。

少しだけ運が悪かったり、少しだけ考えが及ばなかったり。

体の痛みや疲労は分かっても、精神の痛みや疲れは分かり辛い。

他人の事なら尚更だが、自分の事は我慢してしまう。

お前は今、少し心が疲れているだけだ。

治るまでゆっくり休め。

いつか治った時、痛みを知ったお前は少し強くなる。

そして、その分だけ人に優しくなれる。

痛みを知った者が、次に傷付いた者を癒す薬になれるんだ。

だから、今は休め。いいから。な?

んで、いつか俺が疲れ果ててたら助けろよな(笑)」

太陽(フリー写真)

一身独立

私が小さな建築関係のメーカーの担当営業をしていた頃の話です。 私の担当区域には、小さな個人商店がありました。 先代の社長を亡くし、若くして社長になった社長には二人の男の子が…

お茶碗(フリー写真)

テーブルのお皿

私と淳子は、結婚して社宅で暮らし始めました。 台所には四人がやっと座れる小さなテーブルを置き、そこにピカピカの二枚のお皿が並びます。 新しい生活が始まることを感じました。 …

献花(フリー写真)

課長の笑顔

私の前の上司(課長)は無口、無表情。雑談には加わらず、お酒も飲まず、人付き合いをしない堅物でした。 誠実公平、どんな時でも冷静なので頼もしい上司なのですが、堅過ぎて近寄り難い雰囲…

セイコーマート(フリー写真)

小さな子供達の友情

俺はセイコーマートで働いて三年目になる。 いつも買い物に来る小さな子の話を一つ。 その子は生まれつき目が見えないらしく、白い杖をついて母親と一緒に週二、三度うちの店を訪れる…

卵焼き(フリー写真)

とうちゃんの卵焼き

この前、息子の通う保育園で遠足があった。 弁当持参だったのだが、嫁が出産のため入院していたため、俺が作ることになった。 飯を炊くくらいしかしたことがないのに、弁当なんて無理…

自衛隊員の方々(フリー写真)

直立不動の敬礼

2年前、旅行先での駐屯地祭での事。 例によって変な団体が来て、私は嫌な気分になっていた。 するとその集団に向かって、一人の女子高生とおぼしき少女が向かって行く。 少女…

サイコロ(フリー写真)

あがり

俺は小さい頃、家の事情でばあちゃんに預けられていた。 当初は見知らぬ土地に来てまだ間も無いため、当然友達も居ない。 いつしか俺はノートに、自分が考えたすごろくを書くのに夢中…

キャンドル(フリー写真)

キャンドルに懸けた想い

僕は24歳の時、当時勤めていた会社を退職して独立しました。 会社の駐車場で寝泊まりし、お子さんの寝顔以外は殆ど見ることが無いと言う上司の姿に、未来の自分の姿を重ねて怖くなったこと…

お花畑(フリー写真)

本当のやさしさ

遡ること、今から15年以上前。 当時、小学6年生だった僕のクラスに、A君というクラスメイトがいました。 父親のいないA君の家は暮らしぶりが悪いようで、いつも兄弟のお下がりと…

吹雪(フリー写真)

ばあちゃんの手紙

俺の母方のばあちゃんは、いつもニコニコしていて、かわいかった。 生んだ子供は四姉妹。 娘が全員嫁いだ後、長いことじいちゃんと二人暮らしだった。 そして、じいちゃんは2…