同級生との再会

公開日: 心温まる話 | 恋愛

赤い糸(フリー写真)

私はその日、両親、妹と住宅展示場に来ていました。

家を新築する予定となり、両親はここのところ住宅展示場巡りをしていました。

私はなかなか予定が合わず、住宅展示場に来るのはこの日が初めてでした。

家が新しくなることに、家族全員がわくわくしていました。

住宅展示場の家は、どれも平均より高級で夢のような気分でした。

両親もあくまでも参考にする程度で、知識として色々と見ていたのだと思います。

そんな時に突然、背後から名前を呼ばれました。

私が振り向くと、そこには私と同じ年齢くらいの男性が立っていました。

「久しぶりだな~!元気だった?」

私は男性の顔を見ても、すぐには誰なのか分かりませんでした。

男性のスーツの胸元の名札を見てはっとしました。

彼は小学校時代の同級生でした。

私は展示場内を案内してくれる彼の横顔を見ながら、小学校の頃を思い出していました。

小学生の私は、彼に淡い恋に近いような好意を持っていたのです。

展示場で再会した彼は背が高く、とても感じが良く思えました。

すっかり格好良くなっていた彼の笑顔だけは、あの頃のままでした。

その日、私は久しぶりに小学校の卒業アルバムを開いてみました。

昔の彼の写真を見て、展示場での彼を思い出していました。

あの頃と同じ笑顔の彼に再会して、一瞬で好きになっていたのだと思います。

きっとあの展示場に行けば彼にまた会えるだろう。

でも自分から会いに行くことも出来ずに数ヶ月が経ちました。

ある日、一人で街中を歩いていると、向こうから彼に似た人が歩いて来ました。

距離が近付くにつれて、お互いに気付きました。

彼も一人でした。

二人でカフェに入り、連絡先を交換しました。

それからメールでお互いに他愛も無い話をするようになりました。

展示場で再会してから約半年経った頃、初めて食事に行きました。

その帰り道の彼の言葉に、私は泣いてしまいました。

「初恋の相手だったんだ。良かったら付き合ってください」

こんな再会があるなんて思いもしませんでした。

私は彼に再会出来て本当に幸せです。

関連記事

バイキングのお皿(フリー写真)

埃まみれのパンチパーマ

阪神大震災後の話。 当時、俺はあるファミレスの店員をしていて、震災後はボランティアでバイキングのみのメニューを無料で提供する事になった。 開店と同時に満席になって待ち列が出…

父と子(フリー写真)

父が遺したもの

三年前に親父が亡くなったんだけど、殆ど遺産を整理し終えた後に、親父が大事にしていた金庫が出てきたんだよ。 うちは三人兄弟なんだけど、お袋も亡くなっていて、誰もその金庫の中身を知ら…

愛(フリー写真)

伝わる気持ち

嫁は妊娠中。もうすぐ八ヶ月。 ある日、西日の部屋でソファに座ってお腹を撫でている嫁を見ていた。 そしたら何となく言いたくなって、後ろから抱き締めて 「愛してる」 …

皺のある手(フリー写真)

私はおばあちゃんの子だよ

私は幼い時に両親が離婚して、父方の祖父母の家に引き取られ育てられました。 田舎だったので、都会で育った私とは周りの話し方から着る服、履く靴まで全てが違いました。 そのため祖…

味噌焼きおにぎり(フリー写真)

祖母の味噌焼きおにぎり

僕には祖母がいる。 祖父は僕が生まれる前に亡くなった。 だから、祖母は大変だったらしい。 祖父は保険に入っておらず、残されたのは煙草畑と田んぼと仔牛くらいだった。 …

カップル(フリー写真)

書けなかった婚姻届

彼女とはバイト先で知り合った。 彼女の方が年上で、入った時から気にはなっていた。 「付き合ってる人は居ないの?」 「居ないよ…彼氏は欲しいんだけど」 「じゃあ俺…

トラ猫

背中のぬくもり

五年前に、我が家には一匹の茶トラ猫がいました。 当時、姉が家出同然に家を飛び出し、家の中の空気はひどく重く、どこか寂しげなものでした。 私はというと、そんな雰囲気を払拭し…

靴を持つ夫婦(フリー写真)

二つの指輪

「もう死にたい…。もうやだよ…。つらいよ…」 妻は産婦人科の待合室で、人目もはばからず泣いていた。 前回の流産の時、私の妹が妻に言った言葉…。 「中絶経験があったりす…

手を繋ぐカップル(フリー素材)

可愛い彼女がいた

俺には可愛い彼女がいた。 性格は素直でスタイルも良かったが、周囲からは 「え、あの女と付き合ってるの? お幸せに(笑)」 と、よく馬鹿にされた。 彼女は頭が非常…

子供たち

道に咲く愛

ひとりの女性の人生が、いま世界中の人々の心を揺さぶっています。 その名は楼小英(ロウ・シャオイン)。現在88歳の彼女は、腎不全を患い病床にありますが、これまでの人生で築き上げた…