彼女の嘘
あなたは本当に俺を困らせてくれたよね。
あなたと付き合った日。
朝のバスでいきなり大声で、
「付き合ってください!」
そんな大声で言われても困るし。
と言うか場所考えてよ。
※
初めてのデートの日。
寝坊で3時間も遅れて来た。
あれには正直びびったよ。
※
ペアマグを一緒に買った日。
あなたは早速帰りに落として壊したよね。
あの後、もう一度買いに行くの面倒だった。
※
一緒に海遊館へ行った日。
イルカを見ていたら、はぐれちゃったよね。
だってあなたはイルカを見た瞬間、人混みに飛び込んで行ったんだもん。
探すのが大変だった。
※
それからどこへ行くにも手を繋いでいたね。
俺が修学旅行のお土産のぬいぐるみを渡した時。
あなたは嬉し過ぎてか、大泣きしていたね。
周りの人に泣かせたと思われたらしくて、周りの視線が痛かった。
※
あなたと一緒に誕生日を祝った日。
帰り際になかなか離してくれなくて、大変だった。
お陰で夜遅く帰って、親に物凄く怒られた。
※
あなたが、病気の事を打ち明けてくれた時。
何で今まで黙っていたんだよとか、言いたい事が沢山あった。
※
あなたと一緒に泊まった日。
あなたはテンションが上がり過ぎて、俺の友達に電話やメールをしまくっていたよね。
あの後、学校で皆からの質問攻めが大変だったんだよ?
※
あなたから、病気は治ったと聞いた時。
自分の事みたいに嬉しかった。
でもそれを言うのが別れる前日って(笑)。
あなたに東京へ行くからと、別れを言われた時。
めちゃくちゃ辛かった。
心が張り裂けそうだった。
あなたと別れて、それでも連絡が毎日のように来ていた時。
別れた意味ないじゃんって、内心思ってた。
とても嬉しかったけど。
あなたからの連絡が途絶えた時。
ああ、忘れられたんだと、とても凹んだ。
※
高校に入って、あなたから手紙が届いた。
とっても嬉しかった。
でも、そこに入っていた手紙は、あなたからの手紙と、あなたのお母さんからの手紙。
あなたからの手紙には、今までの思い出などが、沢山書いてあった。
それを読んでいる時、今すぐにでも会いたいと、心の中で叫んでいた。
けど、あなたのお母さんからの手紙で、その叫びは打ち消された。
ねえ、何であなたは、病気が治ったなんて嘘を吐いたの?
東京に行く理由も治療のためだって、何で正直に話してくれなかったの?
俺が悲しまないようにって、嘘吐かれた方が悲しいんだよ?
俺はあなたの彼氏です。彼氏なんだから、最後くらい、一緒に居たかったよ。
あなたからの手紙の最後の言葉。
『あなたを愛しています』
その言葉は、あなたの口から、聞きたかったよ。
※
沢山愚痴を書いたけどね、一つ確かな事がある。
それは、あなたと一緒に居れば、笑顔が絶えなかった事。
あなたと一緒に居るのが、本当に楽しかった。
本当に、ありがとうね。
※
あれ以来、本気で恋をするのが恐かった。
また、嘘を吐かれるんじゃないかって。
臆病になっていたんだ。
※
でも、この間、またあなたから小包が届いた。
そこに入っていたのは、あなたが付けていた闘病日記の一ページと、あなたのお気に入りのピアス。
あなたは死んでも、僕を困らせてくれるんだね。
『私の最後のお願い。
私以上に、誰かを愛して下さい』
※
あなたのピアスは今、僕の首にネックレスとなって掛かっています。
あなたの最後のお願いを叶えるために、新しい恋を、今日から始めるよ。
ありがとう。