ラグビーと恩師

公開日: 心温まる話

ラグビー場(フリー写真)

私は高校時代に万引きをして、人生観が変わりました。

中学から好きだった野球を続ける為に、有名な強豪校に希望して入りました。

しかしボールを触らせて貰えず、毎日ボール拾いばかりしていました。

入部して半年足らずで嫌気が差し、少しグレて煙草や部活をサボるようになり、そこで万引きをして捕まってしまいました。

一週間の停学処分になりました。

学校へ戻り、部活に迷惑を掛けた事を顧問に謝り、部活を辞める事になりました。

私は、高校生活は終わったと諦めていました。

学校も辞める予定でした。

その日、帰る途中に話を聞いていた別の顧問の先生に止められ、

「学校を辞めようと思っています」

と伝えると、胸ぐらを掴まれ

「辞めるな」

と止められました。

顧問は僕の家の事情を知っていて、

「母子家庭でこんなに高い入学金を用意してくれた母ちゃんの想いを無駄にするな。

お前が学校を続けるなら、俺が3年間、面倒見たる」

と言った言葉は、今でも忘れられない。

それから、

「ラグビー部に入って夢を持て」

という言葉も忘れられないよ。

その日、母ちゃんにも

「面倒を見させて下さい」

と連絡があった。

俺は部活を辞めた次の日に違う部活に入るのが躊躇われ見学していた。

そしたら二人居る別の顧問に

「帰れ」

と言われ、腹が立ってその場を後にした。

するとその顧問が走って来て、俺を捕まえて一言。

「ラグビーは、見るもんやない。プレイするもんや」

と言われ、この人も熱い先生やと思い、五日後にはラグビーを一緒になってプレイしていた。

それから俺はラグビーを3年間続け、副キャプテンになった。

そして、卒業式の日。

顧問に卒業おめでとうと言われ、顔をくしゃくしゃにして

「ありがとございました!」

と言い卒業しました。

3年間のうちで、休んだのはあの一週間だけだった。

現在の自分があるのは、恩師のお陰です。

ありがとうございました!

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