二人三脚の約束

公開日: 夫婦 | 子供 | 家族 | 心温まる話

赤ちゃんの手

私たちが夢見た奇跡は、結婚して5年目のある日、現実となった。待ちわびた命が、ついに私たちの世界にやって来た。

しかし、幸せの中で隠されていた試練が、子供が2歳になった頃に明らかになった。障害があるという現実に、心は暗い闇に沈み込んでいった。

絶望の淵に立ち、すべてを終わらせようとした瞬間、旦那からのメールが私を止めた。

『あなたとの結婚、そしてあなたから生まれた子供に心からの喜びを感じている。

あなたが苦しんでいるのはわかっているよ。子供に障害があると知ってから、特にね。

でも、私たちの子は、世界で最も幸せな子に違いない。

なぜなら、あなたが母親だからだ。そして私たちの子だから。

道は遠回りになるかもしれない。成長はゆっくりかもしれない。だが、それだけ多くの美しい瞬間を経験できる。

一緒に、手を取り合って、しっかりと歩いていこう。

今日だけでもこんなに多くの幸せがあった。

子供が「ママ、大好き!」と言ってくれたこと。

まだ暗いうちに家族3人で散歩に出かけたこと。

お夕食のブリ大根がとても美味しかったこと。

そして、家族3人で狭いお風呂にギュッと入ったこと。

ほら、今日一日でこれだけの幸せを共有したよね? 明日は、どんな小さな喜びが待っているかな。

ねえ、ママ。

そして、子供が眠った後は二人でDVDを見よう。君の好きな「古畑任三郎」を買ってきたんだ。今日もう一つ、幸せが増えたね。

苦しみは毎日続くものじゃない。幸せは、何度でも心の中に芽生える。

一緒にこの困難を乗り越えよう』

その言葉に心が照らされ、私は新たな希望を見出した。そして約束した通り、二人三脚で、楽しく、愛情豊かな日々を送っている。

関連記事

妊婦さん(フリー写真)

普通の一家の物語

その昔、大学の同級生の女の子にがりがりに痩せた子が居た。 細身の娘が好みだったので声を掛け、程なく恋仲に。 ある日、 「心臓に大穴が空いていて、苦しい。 子供も…

飛行機雲(フリー写真)

きっと天国では

二十歳でヨーロッパに旅をした時の実話をいっちょう。 ルフトハンザの国内線に乗ってフランクフルト上空に居た時、隣に座っていたアメリカ人のじい様に話し掛けられた。 日本は良い国…

渓流(フリー写真)

お母さんと呼んだ日

私がまだ小学2年生の頃、継母が父の後妻として一緒に住むことになった。 特に苛められたとかそういうことは無かったのだけど、何だか馴染めなくて、いつまで経っても「お母さん」と呼べない…

日本料理(フリー写真)

ここ一番の踏ん張りどころ

神戸観光ホテルで修業した時は、往生しましたよ。板長にいじめられたんです。 僕、仲居さんとのチームワークを良くしようと思って、彼女たちに気を遣っていたから、結構可愛がられていたん…

空(フリー写真)

見守ってくれた兄

我が家の仏壇には、他より一回り小さな位牌があった。 両親に聞いた話では、生まれる前に流産してしまった俺の兄のものだという。 両親はその子に名前(A)を付け、事ある毎に …

診療所(フリー写真)

今は亡き僕の先生

僕は幼い頃から病弱で、いつも何かしらの病気にか罹っていた。 例えば、喘息、熱、インフルエンザなど。 そのような時はいつも診療所の先生に診ていただいていた。 その先生…

赤ちゃんの手を握る母の手

最後の親孝行に

無職、片桐康晴被告は、京都市伏見区桂川河川敷で2006年2月1日、認知症の母親の介護で生活苦に陥り、母親を殺害し自身も無理心中を図った。 その事件の初公判は19日に行われた。 …

手紙を書く手(フリー写真)

寂しい音

ある書道の時間のことです。 教壇から見ていると、筆の持ち方がおかしい女子生徒が居ました。 傍に寄って「その持ち方は違うよ」と言おうとした私は、咄嗟にその言葉を呑み込みまし…

父と子(フリー写真)

俺には母親がいない。 俺を産んですぐ事故で死んでしまったらしい。 産まれた時から耳が聞こえなかった俺は、物心ついた時にはもう既に簡単な手話を使っていた。 耳が聞こえな…

結婚指輪(フリー写真)

会社対抗クイズ

近所に住んでいるご夫婦の話です。 その夫婦には子供が居らず、そのせいか私は子供の頃から可愛がってもらっていました。 おじさんは無口な土建屋の事務員。おばさんは自宅で商売をし…