一人娘が嫁に行った

公開日: 子供 | 家族 | 心温まる話

ブーケを持つ花嫁(フリー写真)

この前、一人娘が嫁に行った。

目に入れても痛くないと断言出来る一人娘が嫁に行った。

結婚式で、

「お父さん、今までありがとう。大好きです」

と言われた。

相手側の親も居たし、嫁の旦那も居た。

何より笑顔で送ってやりたいと思っていた。

だから俺は泣かなかった。

涙と鼻水を流して笑った。我ながら情けないと思った。

まだ赤ん坊だった頃、皺くちゃの顔で俺を見て泣いた娘。

立とうとして転び、泣いた娘。

背中よりも大きなランドセルを背負って、カメラの画面一杯に笑顔を見せた娘。

まだ手が隠れるほど大きな制服に身を包んだ娘。

お父さんのと一緒に洗わないでと嫁に怒鳴った娘。

嫁がこの世を離れた時、病室の窓ガラスがビリビリ言うくらい泣いた娘。

三回に一回美味しい料理を作ってくれた娘(今は三回が三回とも美味しい。断言する)。

頬を染めて、でも緊張しながら男(現旦那)を連れて来た娘。

そして結婚式で「大好きです」と言って、笑い泣きしている娘。

嫁に似て笑顔の似合う娘が、嫁に行ったよ。

娘のウェディングドレス、綺麗だったよ。

若い頃の嫁にそっくりだったよ。

俺も娘も元気にやっているから、心配するなよ。

関連記事

手作りハンバーグ(フリー写真)

最後の味

私が8歳で、弟が5歳の頃の話です。 当時、母が病気で入院してしまい、父が単身赴任中であることから、私達は父方の祖母の家に預けられていました。 母や私達を嫌っていた祖母は、…

靴を持つ夫婦(フリー写真)

二つの指輪

「もう死にたい…。もうやだよ…。つらいよ…」 妻は産婦人科の待合室で、人目もはばからず泣いていた。 前回の流産の時、私の妹が妻に言った言葉…。 「中絶経験があったりす…

桜(フリー写真)

春一番と親切なカップル

春一番が吹き荒れた日。 本当に物凄い強風で、その日は朝から店の看板が倒れたりトラブル続きで、ずっと落ち着かず疲れ切っていた。 そんな時、若いカップルのレジをしていると、彼氏…

シロツメグサ

手話で結ぶ絆

私たちの娘は3歳で、ほとんど聞こえません。 その現実を知った日、私と妻はただただ涙に暮れました。繰り返し泣きました。 難聴という言葉が娘を別の世界の生き物に見せてしまうほ…

妊婦さんのお腹(フリー写真)

母子手帳

今年の6月に母が亡くなった。火事だった。 同居していた父親は外出していて、弟は無事に逃げる事が出来たのだけど、母親は煙に巻かれて既に駄目だった。 自分は違う地方に住んでいた…

バイキングのお皿(フリー写真)

埃まみれのパンチパーマ

阪神大震災後の話。 当時、俺はあるファミレスの店員をしていて、震災後はボランティアでバイキングのみのメニューを無料で提供する事になった。 開店と同時に満席になって待ち列が出…

父(フリー写真)

父と私と、ときどきおじさん

私が幼稚園、年少から年長頃の話である。 私には母と父が居り、3人暮らしであった。 今でも記憶にある、3人でのお風呂が幸せな家族の思い出であった。 父との思い出に、近…

カップル

余命と永遠の誓い

彼は肺がんで入院し、余命宣告されていました。 本人は退院後の仕事の予定を立て、これからの人生に気力を振り絞っていました。 私と彼は半同棲状態で、彼はバツイチで大分年上だっ…

スケッチブック(フリー写真)

手作りのアルバム

うちは貧乏な母子家庭で、俺が生まれた時はカメラなんて無かった。 だから写真の代わりに、母さんが色鉛筆で俺の絵を描いてアルバムにしていた。 絵は決して上手ではない。 た…

瓦礫

災害の中での希望と絶望

東日本大震災が発生した。 辺りは想像を絶する光景に変わっていた。鳥居のように積み重なった車、田んぼに浮かぶ漁船。一階部分は瓦礫で隙間なく埋め尽くされ、道路さえまともに走れない状…