一冊のノート

公開日: 仕事 | 心温まる話 | 悲しい話

ノートとペン(フリー写真)

会社に入って3年目に、マンツーマンで一人の新人の教育を担当する事になりました。

実際に会ってみると覚えが悪く、何で俺がこの子を担当するんだろうと感じました。

しかし仕事ですから、現場で教えて行きましたが怒鳴る事多々。半年が過ぎようとした時に彼は元気がなくなり、会社を休むようになりました。

休むようになって2週間後に、この子の両親から小生と当時の部長へ会って話したい連絡がありました。

小生が怒鳴る事が多々だったので、その子に精神的ダメージがあり両親が訴えているのかと思いましたが、その子の両親から、その子が癌が発見され余命2年は持たないとの報告がありました。

両親は体調を見ながら癌だからと小生の指導の手を抜かないでと哀願されました。一人前の社会人として旅立って欲しいとの事でした。

彼の一時復帰後に、小生は必死に色々なことを教えました。

しかし、先が短いから色々な事を覚えて欲しくて強く対応してしまいました。

いつも会社が終わった後、居酒屋で強く当たり過ぎたんじゃないかと、酒を飲みながら泣いていました。

そしたら、たまたま同じ部署の女の子が泣きながら飲んでいる小生を見つけて、声をかけてきました。以前女子会で、その居酒屋で小生を見たそうです。

訳を話してしまいました。だから辛いから酒を飲んでいるんだと。すると彼女は怒鳴り始めました。

「社会では、辛い事を一杯抱えてている人がいる。酒を飲んで解決するなら皆べろべろになるまで飲んでる。それに、あなたは明日から二日酔いに近い状態で、あの子に指導するの!」

目が覚めました。もっと心身とも万全であの子に指導しようと決めました。

しかし、若いから癌は進行します。彼は3ヶ月を過ぎた頃に体調が悪くなり入院しました。

見舞いに行くと彼はベットから、

「復帰したら、また色々と教えてください」

小生は両親からのお願いを思い出し、

「あ~、もちろんビシビシいくよ」

と言って病院を去りました。

その後、約10日後に彼はこの世を去りました。

お通夜に彼の両親から一冊のノートを手渡されました。

小生が彼に教えた事をノートにまとめていたのです。

最後に入院した際にも元気な時はノートをまとめていたそうです。

涙が出てきました。

でも小生は、そのノートを受け取る事ができませんでした。

彼の両親に、彼の得たノウハウは彼が行った天国に持って行ってくださいとお願いしました。

ノートは棺に入れて火葬されました。

一冊のノート。今でも忘れられません。

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