猫のゆめと過ごした日々
高校生の冬、私の電気毛布の上で産まれた猫のゆめ。出産予定日の十日前に入院したあの日、玄関で待つ猫だったゆめが最後に見せた姿を、娘が二歳になった今、ようやく書き残…
思い切り泣きたいとき、この場所へ来てください。大切な人を失ったこと、届かなかった気持ち、間に合わなかった言葉——悲しい話には、悲しいからこそ伝わる本当のことが詰まっています。号泣できる実話風短編を集めました。
高校生の冬、私の電気毛布の上で産まれた猫のゆめ。出産予定日の十日前に入院したあの日、玄関で待つ猫だったゆめが最後に見せた姿を、娘が二歳になった今、ようやく書き残…
母は毎年、梅雨が明けると麦茶を製氷皿で凍らせていた。薄まらんように、と。脳の病で手が震えるようになっても、その習慣だけはやめなかった。私はある朝、その製氷皿を落…
俺の爺さんは、戦争中に戦地で足を撃たれた。 撤退命令が響き渡り、仲間たちは必死に撤退していったが、爺さんは立ち上がることさえできなかった。 血で濡れた土の匂いと…
インドの砂漠地帯で、私は傭兵としてパキスタン軍と対峙していた。 敵味方の区別もつかぬほどの荒涼とした景色の中、銃声が飛び交い、朝も昼もなく砲弾が夜空を裂いていた…
戦時中の沖縄でのことです。 当時12歳だった叔父は、自然の洞穴を利用した「壕」に身を潜めていました。 そこには、同じように避難していた住民たちと、部隊からはぐれ…
俺は、これまでの人生で三度だけ、神様にすがったことがある。 ※ 最初は、七歳のとき。 両親が離婚し、俺は父方の祖父母に預けられた。 祖父母はとても厳しく、愛情と…
私の前の上司、課長は無口で無表情な人でした。 雑談には加わらず、お酒も飲まない。人付き合いを避ける、どこまでも堅物な方でした。 そのぶん、誠実で公平。どんな場面…
妻と子を失い、半年ものあいだ灯りのない台所で暮らしていた男を救ったのは、隣家の小さな女の子でした。十八年後、娘になった君の結婚式で交わした言葉と、棚に飾られた折…
妻と授かったばかりの子を居眠り運転のトラックで失った夫が、加害者の婚約者から毎月届く現金書留を新しい口座へ預け続けています。引き出しの奥に重ねた通帳と手紙は、い…
2006年2月1日、京都市伏見区・桂川の河川敷で、一組の母子が静かに“終わり”を迎えようとしていました。 事件として報じられたのは、無職の片桐康晴被告が、認知症…
「出て行け」と親に言われ、家を飛び出してから6年が経った。 あのときの怒鳴り声と、自分の怒りは今でも耳に残っている。 家を出てから3年が経った頃、ひとりの女性と…
手が震える母がつくる茶色い弁当を、毎日バケツに空けていた高校二年の秋。海老を入れた朝の最後のお弁当に私が返した言葉と、母の手帳に残された二行が、二十年たった今も…
終戦後の満州から逃げ延びた祖父と、沖縄で幼い弟を背負って歩いた祖母。私が二十七歳の秋に届いた一通の手紙が、語られなかった戦争の記憶を静かに開いた。生かされた命と…
あの日、私は二十一歳。倫子と私は、ほんの些細なことで喧嘩をしてしまいました。 明らかに私に非があったのに、素直になれず、謝ることもできないまま夜を迎えました。 …
嫁と娘が、ひと月前に亡くなった。 交通事故だった。車は大破。単独事故だったらしい。 その知らせを受けたのは、出張先の根室にいたときだった。 何とかして帰ろうとし…